想いと技術力の結晶である港大橋は兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)においても、致命的な損傷を受けることはありませんでした。しかし、大きな損傷を受けた橋もあり、自然の猛威を思い知らされました。自然は時に人知を超えることがあるという教訓から、「絶対に壊れない橋ではなく、地震の力をうまく逃がしてコントロールし、致命的な損傷を受けない」という新しいコンセプトで地震対策を2006年に施しました。開通後30年が経過した港大橋は、またしても前例の無い課題に挑戦し、より安全な橋に生まれ変わりました。
港大橋の建設プロジェクトは1970年7月15日に起工式が行われ、それからわずか4年後の1974年7月15日に供用するという今では考えられないペースで進められました。当時、経済界、地方自治体等から港大橋の早期開通が望まれる中、建設において数多くの技術的課題があり、当時我が国の橋梁で初めて超高張力鋼(HT70、HT80)の採用や、模型を作成して耐震・耐風実験を行う等、最先端の技術と新しい工法・材料の開発等を駆使することで、完成に至りました。開通から50年経過する現在でも、トラス橋としては世界第3位の長さ(中央径間長)を誇り、新しいチャレンジに果敢に取り組んだ姿勢は次の世代にも引き継がれています。港大橋は阪神高速だけではなく、産官学幅広い分野の方々の努力とアツい想いの結晶です。
港大橋は構造が複雑であるため、2016年度よりDr.RINGと呼ばれる点検台車が使用されています。Dr.RINGの設置にあたっては、港大橋の上路(16号大阪港線)通行止めや起重機船を用いた海上一括架設など、経験者がいない中での工事となりました。地震時の影響や溶接精度など、沢山の課題を乗り越え、雨が降る中、Dr.RINGを設置した光景は今でも語り継がれています。こうして、開通後40年が経過した港大橋は再び難しい課題を乗り越えて、これから先も維持管理しやすい姿になりました。
維持管理の更なる高度化を目指し、新たな価値創造に向けて先進技術の開発に取り組んでいきます。具体的には、現実空間にある港大橋を含む阪神高速道路の構造物をサイバー空間に再現し、点検データなど現実の情報を入力しつつ、シミュレーションを実施することで、様々な想定をすることができる技術の実現に取り組んでいます。この技術が実現すれば、例えば、大地震が発生した場合に劣化した橋梁でどのようなことが起きるのか、それを防ぐためには何をすればよいのかが分かり、最適な維持管理を行うことができます。今後も、次の50年、100年と更なる進化を遂げるために、新たな技術に挑戦し続けます。