第28話 先進的な保全情報管理システムを開発
日常の維持管理から長期的な修繕計画まで
保全情報管理システム
道路の供用延長が増え、供用年数が延びるに従い、道路を安全・快適に保つ維持管理業務に必要な情報量は日々増えていく。効果的かつ効率的に維持管理業務を行うには、この膨大な量の情報を正確、かつ使いやすいよう整理しておくことが重要となる。
阪神高速道路が開発した、保全情報管理システム(Maintenance Information Management System)は、管内の道路構造物に関する広範なデータや資料を一括保管してデータベース化した画期的なもので、日常の点検・修繕、定期的な補修、長期的な修繕計画の立案等に活用されている。
基本的な情報は、資産データ(道路構造物の諸元、図面など)、点検データ(毎日どこかで点検しているので、年間数万件に及ぶ)、補修データ(補修のたびに蓄積されていく)の3つである。保全情報管理システムは、こうした(1)維持管理情報を一元管理し、(2)必要な情報を目的に応じて検索・利用可能なものとし、さらに将来を見据えた(3)アセットマネジメント(構造物などの資産管理)にも活用できるようにしたものなのである。
阪神高速のアセットマネジメントが目指すもの
道路構造物(おもに橋梁)の将来的な維持管理を適切に行うために、保全情報管理システムをベースにしたアセットマネジメント(資産管理)システムを構築し、運用している。
その成果のひとつが、H-BMS(阪神高速橋梁マネジメントシステム)であり、その運用をサポートするロジックモデル(維持管理マネジメントシステム)である。
H-BMSは、蓄積されたデータを基に構造物(橋梁)の劣化予測や工学的な評価を行い、その構造物に最適な維持管理計画を提示する。最適な維持管理計画とは、費用対効果を考慮した最小限の管理水準の設定、費用の長期的な推移予測、維持管理費の必要額の算出などであり、これにより効果的な補修計画を立案することができる。
ロジックモデルとは、工学的な評価ができない要素、たとえば清掃業務や保守点検業務について、定量的な指標、適切な管理水準を設定することにより、個々の業務の客観的な業績達成度を評価し、最適な頻度や体制を提示するものである。
この2つのツールを利用することで、維持管理の効率化が可能となる。
すなわち、過去のデータの蓄積(保全情報管理システム)を基に、維持修繕計画を立案し、効率的な工事を実施する。それを点検、評価、検証した結果が、次期修繕工事に活かすべき情報として、新たに蓄積されていく。(*維持管理サイクルのチャート参照)
阪神高速道路の保有する道路、道路構造物は、我々が次の世代に引き継ぐべき貴重な資産であり、将来にわたって「安全・安心・快適」に利用できるよう、周到な情報管理によって適切に運用していくことが阪神高速道路の責務と考えている。
維持管理サイクルチャート
(2014.10.3掲載)