第14話 623日間の闘い - 新技術・新工法の採用 -
日本初、鋼製梁の採用で工期を1/3に
鋼製梁設置工事
鋼製梁は、再構築する橋脚のうち209基で採用した。梁は鋼製、下の柱はRCである。柱をコンクリート打設して造っておいてから、鋼製梁をクレーン等で吊り上げて柱に乗せ、連結部をコンクリートで固めて接合する。メリットは、基礎やフーチングを再利用するから工期が縮まること。梁が軽量化されるので耐震性も向上する。しかし当時、首都公団が実験はしていたが、実際の施工例はなかった。
採用するとすれば日本初ということになるが、下部工請負業者も上部工請負業者も、梁と柱の接合工法に難色を示した。当然の反応だった。当公団としても初めてだ。しかし、机上で検討している時間はなかった。200基を超すRC脚をいかに早く、安全に構築するか決断を迫られていたのである。
業者と一緒に実物大の模型を試験施工することにし、その結果、施工業者も結合の工法に無理が無いと確認できたことで導入が決定。橋脚に関する工期は、ほぼ1/3に短縮された。日本初の工法がこれだけ大規模に導入されたことは画期的だったが、それ以上に、このRC脚と鋼製梁の複合構造が工期短縮に果たした貢献は大きなものだった。
世界初の連続立体免震橋
震災直後の弁天高架橋
中央区波止場町から弁天町までの区間で、橋脚と基礎構造の間に免震支承を挟み込んだ「19径間連続立体免震橋」を採用した。橋脚の下端に免震装置を設ける橋梁形式だ。実施例は、海外の鉄道橋が1例あるのみ。道路橋としては世界初の試みだった。
弁天地区は、国道2号の上を走る。延長は686m。橋脚は複数がせん断破壊され、一部落橋や桁の座屈などであった。神戸線復旧建設部では、復旧に当たり、①被害のなかった既設杭基礎は再利用する、②上部工の軽量化と免震支承の採用、③単柱橋脚と橋梁の剛結化と桁の連続化、の3点を基本方針として、上部構造と橋脚の梁を剛結した連続立体ラーメン構造に決定した。しかし、その場合、この区間では基礎構造との結合に増し杭が必要と判明したのである。
復旧後の弁天高架橋
(世界初の橋脚下部免震構造を採用)
増し杭には時間が掛かる。国道の過度の交通規制は避けたい、工期短縮は絶対の条件という中で採用に踏み切ったのが「柱下部に免震支承を設置する方法」だった。建物と同じように、道路橋にも免震沓を下に置けるのではないか、との発想である。部分モデル、立体モデルで動的・静的解析をした結果、増し杭は不要で、橋脚上に免震支承を置いた場合と同様の効果が確認された。
架設は、鉄筋コンクリート製の橋脚基部の上に免震支承をアンカーボルトで据え付けた後、クレーンで鋼製の柱を架設。次に、左右の柱を横梁で連結し、門型構造にした。工事は、総鋼重5800トンの大型橋梁にもかかわらず、本格着手からわずか4ヵ月弱で桁の閉合式にこぎ着けることができた。震災復旧の工期短縮という、特異な条件の中で採用された橋梁形式だったが、交通振動低減などの効果も見られ、道路橋建設の新たな構造形式のひとつとして、今後も期待に応えることができるだろう。
(2014.6.27掲載)