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阪神高速 ショートストーリー

第18話 古都の景観に溶け込むデザインを構築

景観検討委員会を立ち上げて審議

8号京都線

 阪神高速8号京都線は、京都市山科区から西へ稲荷山トンネルを抜けて、伏見区深草、南区上鳥羽に至り、そこから南進して第二京阪道路に連絡する都市高速道路である。
 建設にあたっては、京都市内で初めての都市高速道路ということで、計画段階から古都の歴史的景観や自然環境への配慮が強く求められ、高速道路の色彩やデザインなど景観整備のあり方について、阪神高速と京都市、学識経験者等で構成する京都高速道路景観検討委員会が立ち上げられ、審議を重ねた。

伝統的な京都のイメージを表現

酒蔵をイメージした十条換気所

 景観上、最も大きな影響があると考えられたのが、トンネルの東西出口付近に設けられる換気所であった。西の伏見区側には、近くに有名な東福寺などがあり、当初は、換気所の建物が目立たないようにするにはどうすればいいか、が討議された。しかし、巨大な換気所と30mに及ぶ高い換気塔は、隠すよりもむしろ、京都にふさわしい建築デザインを導入して、京都南部地域のランドマーク的な役割を果たすものにするべきだ、との結論に至る。そこで、京都南部に新しい都市拠点の形成を促すという8号京都線の役割を踏まえて、京都の再生を感じさせる斬新で明るいイメージが設定された。
 具体的には、伝統的な伏見の酒蔵をモチーフとした。基礎部分は黒のタイル、その上部は酒蔵の漆喰壁をイメージした白壁とすることで、両者の対比が印象的な存在感のある建物となった。また、換気塔は周囲に威圧感を与えないよう、2本に分けて配置し、最上部は日本の歴史的建築物に用いられる「いぶし瓦」を意識したデザインにすることで和風を強調した。

レンガ・タイルが特徴的な山科換気所

 東側の山科換気所は、風致地区内にあり、周囲が低層住宅地であることから、こちらはできるだけ目立たない、景観になじむような建物を目指した。工夫は、明治・大正期のレンガ建築が多い京都市を意識して、レンガタイルを使用したことだった。換気塔の表面にレンガタイルを貼り、渋いレトロ感を醸し出した。また、建物の低層部には、穏やかな曲線を描く日本独特の「むくり屋根」を採用し、「和」の柔らかさを強調した。

市街地では橋脚や梁の形状を工夫

鳥居をイメージした橋脚

 伏見区鴨川東~南区上鳥羽の区間では、大きなコンクリートの橋脚が周囲に圧迫感を与えないように配慮した。橋脚の、柱の角を面取りし、柱と梁の部分の境界には段差をつけるなど、柱そのものがすっきりと細く見える工夫を施している。また、柱から梁に至る部分には、神社の屋根のような滑らかな曲線を採用した。
 上鳥羽~第二京阪道路間では、直線を基調としたシンプルなデザインの橋脚で統一。鳥居の形をイメージして逆八の字に上部を広げた橋脚は、京都初の都市高速道路にふさわしい個性的な印象を与えるものとなった。

(2014.7.24掲載)

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