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コミュニケーション型共同研究で生まれた技術を紹介します!~玉出入口のリニューアル工事を支えた床版撤去技術~

コミュニケーション型共同研究は、企業さまの技術・シーズが阪神高速グループの課題・ニーズに対応するかコミュニケーションにより確認し、有意義な成果が期待される場合に共同で実施する研究制度です。その中で生まれた特に優れた技術についてのご紹介と、コミュニケーションを進めるにあたって企業さまのシーズと当社のニーズがどう合致したか、また、共同研究の中でどのような取り組みを行ったかについて、ご紹介させて頂きます。

Hydro-Jet RD工法    共同研究者 飛島建設㈱、第一カッター興業㈱

共同研究者のシーズ

・水処理施設の耐震補強等のリニューアル工事を得意としており、土木構造物を撤去する際の切断技術や削孔技術に優れている。

・吹付工法による断面修復工法を得意としており、コンクリート材料の開発に優れている。

阪神高速のニーズ

・昭和39年に環状線(土佐堀~湊町)が最初に開通してから50年以上経過しており、全体の約3割で開通から40年以上が経過し構造物が高齢化している。さらに、大型車交通量の増加や車両総重量の増加、凍結防止材の使用などによって、大きなダメージを受けている。

・構造物の大規模更新には、長期間(数か月~数年)の通行止め工事を伴い、お客さまや周辺住民の方々への影響が大きく、通行止め工事期間を極力短期間、かつ低騒音で施工することが求められている。

ニーズとシーズの合致

共同研究者とのコミュニケーションを通し、共同研究者の持つ「ウォータージェット(WJ)」技術を応用することで、コンクリート床版を撤去する際に必要な床版と桁との切り離し作業を、交通供用させながら先行して行うことにより、通行止め期間を短縮する施工法について共同研究を開始しました。

技術の概要[従来工法との比較]

合成桁橋では桁と床版を接合するために「スタッド」と呼ばれる金属が密に配置されており、従来工法では、繋ぎとめられていない床版の部分を先に分割で撤去し、その後スタッド周辺のコンクリートをはつって撤去していました。スタッド周辺のコンクリートの撤去には時間を要するうえに、すべての工程で、通行止めが必要です。

共同研究により開発した「Hydro-Jet RD工法」では、WJ技術を使いスタッド周りのコンクリートを除去し、スタッドを露出させたあと、コンクリートの代わりをする「仮補強材」を設置することで、交通供用させながらスタッド周りのコンクリートを除去することができます。

通行止め前にスタッド周りのコンクリートを撤去することで、通行止め後はスタッドを切断するだけで桁と床版を分離することができるため、通行止め時間を従来工法に比べて短くすることが可能になります。

技術の効果

本工法を使用することで、従来通行止めを行う必要があった工種を通行止めが行わない事前作業に回すことができ、通行止め期間を約半分に短縮可能と試算しています。

研究内容

共同研究者と当社で協力の上、以下の部分について研究・開発を行いました。
・狭隘な桁と床版接合部に適用できるWJ装置を開発しました。
・高速道路を利用いただきながら、桁と床版接合部のコンクリートを除去するための仮補強方法を開発しました。
・WJで使用する大量の水を路下に漏らさない防水足場を開発しました。

現場への適用

共同研究で得られた成果を、実工事に適用しました。
実際に新工法で施工を行い、新技術によって得られた効果を確認しました。
15号堺線玉出入口リニューアル工事
 ▶施工箇所 15号堺線玉で入口
 ▶施工内容 コンクリート床版の大規模更新工事
 ▶施工期間 平成30年3月~平成30年12月

施工の中では、以下の目標を設定し、それに対する効果を確認しました。

①交通影響を小さくするため、通行止め期間を短縮する。
②住居等に近接した施工のため、工事中の騒音、粉塵の抑制を図る。

①については、新工法を採用することで、道路を利用いただきながら事前作業で既設コンクリート床版と鋼桁との接合部のコンクリートを撤去することができ、通行止め期間の短縮を図ることができました。
②については、水を使用した工法の採用と、防音・防水の足場を使用することで、特に騒音の大きいコンクリートのはつり作業を避けることができました。

阪神高速は、門戸を広く共同研究先を募集するため、今後もコミュニケーション型共同研究の取り組みを行ってまいります。直近では、本年5/21、5/22の2日間にコミュニケーション型共同研究の公募相談会を予定しており、3/20~4/19の間、公募相談会に参加して頂ける企業さまを募集しています(詳細は、こちらをご覧ください)。共同研究では、企業さまのシーズに対するニーズへの適用可能性の検討や、阪神高速グループのニーズに応じたシーズのさらなる研究開発、実用化に向けた具現化(実装、試作)に取り組みます。共同研究において新しいアイデアが生まれた場合は、特許の共同取得も考えています。実用化や実績の有無は問いません。高速道路に適用の可能性があるシーズをお持ちの皆様のご応募を心よりお待ちしております。