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コミュニケーション型共同研究で生まれた技術を紹介します! ~赤外線カメラを用いた鋼橋の応力測定技術~

コミュニケーション型共同研究は、企業さまの技術・シーズが阪神高速グループの課題・ニーズに対応するかコミュニケーションにより確認し、有意義な成果が期待される場合に共同で実施する研究制度です。その中で生まれた特に優れた技術についてのご紹介と、コミュニケーションを進めるにあたって企業さまのシーズと当社のニーズがどう合致したか、また、共同研究の中でどのような取り組みを行ったかについて、ご紹介させて頂きます。

赤外線カメラを用いた実働応力測定技術

共同研究者:パナソニック システムソリューションズ ジャパン㈱ 関西社パナソニック㈱ コネクティッドソリューションズ社

共同研究者のシーズ

・赤外線カメラにより取得した画像から、対象物に発生する応力を解析により算出し、画像範囲内の任意の位置で応力を出力したり、数値を基に可視画像を作成したりする技術を有している。

・機械部品の応力集中部を探査する検査技術として、社内の製品検査に使用している。

阪神高速のニーズ

・昭和39年に環状線(土佐堀~湊町)が最初に開通してから50年以上経過しており、全体の約3割で開通から40年以上が経過し構造物が高齢化している。さらに、大型車交通量の増加や車両総重量の増加も影響して、鋼桁では疲労によりき裂が発生している。

・疲労き裂の発生には、鋼桁に発生する応力の大きさが大きく影響しており、応力を簡易に測定する技術にニーズがある。

ニーズとシーズの合致

共同研究者とのコミュニケーションを通し、共同研究者の持つ「赤外線カメラを用いた応力測定」技術を応用することで、自動車の通行に伴って発生する鋼桁の応力を簡易に測定し評価する技術について共同研究を開始しました。

技術の概要[従来工法との比較]

鋼桁で応力を測定する場合に、これまでの技術では、「ひずみゲージ」という電気抵抗から構造物に生じる「ひずみ(変形量)」を特定する計測素子を使用し、それを基にして弾性理論から応力を計算していました。この方法では、ゲージの貼り付けや計測機器のセットに作業用足場や高所作業車・高架下の道路の交通規制が必要でした。

共同研究により開発した「赤外線カメラを用いた実働応力測定技術」では、高架下から赤外線カメラで遠方撮影により取得した温度画像を基に、熱弾性効果の理論を基にした解析処理により応力を測定することが可能です。このため、本技術を活用すると、作業用足場や高所作業車・高架下の道路の交通規制が不要となり、従来技術と同精度でありながらより簡易に応力測定を実施することができます。


赤外線画像から応力への変換の流れ(箱桁内での計測例からイメージ化)

研究内容と研究結果

共同研究者と当社で協力の上、以下の部分について研究・開発を行いました。

  • 実際の鋼桁において、従来技術と同等の精度で評価するための、高架下からの赤外線画像データの取得方法とデータの分析方法を開発しました。
  • データを取得した現場条件を基に、本技術の適用条件(気温・対象物との距離や画角など)を設定しました。

今後の展開

本技術を大規模修繕事業における鋼桁の疲労リスク評価や補強の優先度の評価で活用していく予定です。

阪神高速は、門戸を広く共同研究先を募集するため、今後もコミュニケーション型共同研究の取り組みを行ってまいります。直近では、本年10/23、10/24の2日間にコミュニケーション型共同研究の公募相談会を予定しております(詳細は、★応募記事URL★をご覧ください)。共同研究では、企業さまのシーズに対するニーズへの適用可能性の検討や、阪神高速グループのニーズに応じたシーズのさらなる研究開発、実用化に向けた具現化(実装、試作)に取り組みます。共同研究において新しいアイデアが生まれた場合は、特許の共同取得も考えています。実用化や実績の有無は問いません。高速道路に適用の可能性があるシーズをお持ちの皆様のご応募を心よりお待ちしております。