点検作業要プラットフォーム Dr.RING TECHNICAL INFO. 03

Dr.RINGを設置したきっかけ

港大橋は美しい外観を持つ一方で、複雑多岐な構造となっているため、維持管理や補修のために足場を設置することが難しいことから、供用4年後の1983年に橋梁点検台車が設置されました。しかし、設置から30年が経過し、海風の影響から随所で劣化が確認されました。

2012年12月に発生した中央自動車道笹子トンネルの天井板崩落事故を受け、日本国内で老朽化対策の重要性が高まり、2014年7月より、5年に1回の頻度で構造物を近くで見て点検することが義務づけられました。

そこで、効果的・効率的な維持管理を確立するため、老朽化した点検台車よりも近くで港大橋を見ることができる橋梁点検台車を2014年から3年超の工期で改修し、2018年2月より運用を開始しました。

より効果的・効率的な維持管理を確立する取り組みとして新たに誕生した港大橋橋梁点検台車は、Dr.RING(Repair & Inspection equipment for Nanko Gate)と呼ばれ、大阪港や阪神高速のシンボルの港大橋の維持管理に大きく貢献しています。旧橋梁点検台車よりも30%以上近接可能面積が増えています。

全国的に見ても橋梁点検台車の工事は類を見ず、阪神高速においても指折りの重交通路線での点検台車の更新であったため、これほどの巨大な設備の更新を経験した社員はおらず、手探りで工事を進めました。

写真:Dr.RING

Dr.RINGの設置

Dr.RINGは品質確保のため千葉県内の工場で製造しました。Dr.RINGは、連結・分離という動きができますが、工場内での試験ができないことが課題となりました。そこで、大型船舶用ドックに港大橋を再現したレールを作り試運転をしました。

試運転を行ったDr.RINGは一度解体し、千葉県から大阪港へ3日で曳航する予定でしたが、台風の接近により伊勢湾に一時避難することになりました。大阪港へ無事曳航できたときは、安堵とともに迫る設置への緊張感での高揚感に包まれました。

Dr.RINGの設置箇所は海上約80mのレールにあり、3,700トン吊りのクレーン船を用いることになりました。一日10万台を超える港大橋を通行止めし、Dr.RINGを設置しました。

写真:試験の様子
試験の様子
写真:設置の様子
設置の様子

Dr.RING ~現在使ってみての感想や想い~

実際にDr.RINGを使って点検している社員にお話しを聞いてみました。

港大橋に以前に設置されていた点検台車は下面があいている’コの字型’の形状であったため、車両が走行する道路の下面に近づくことが困難でした。改良されたDr.RINGは橋を囲うように’ロの字型’となり、さらに上下降可能な作業車(リフター)が設置されたことで、下面からの近接点検が可能となりました。

Dr.RINGを使う際は次のようなことに気をつけています。

まず、港大橋は航路上を跨いでいるため大型船舶の往来が非常に多い場所です。Dr.RINGの移動速度は5m/分程度とゆっくりであるため、移動中に大型船舶と衝突する可能性があります。そのためDr.RINGが船舶に接近・接触しないよう、安全情報センターと連絡を取り合い、船舶の運航状況を確認しています。

また、点検時は海面スレスレまでワイヤーで吊られているゴンドラを下ろし点検を行います。ゴンドラは風の影響を受けやすく少しの風でも大きく揺れるため、安全に点検できるよう常に風速を測りながら作業をしています。

点検時の注意点はありますが、Dr.RINGができたおかげで、構造物により近接できることになり、点検の品質の向上、構造物の安全確保に繋がりました。私たち点検技術者は、これからも阪神高速道路の維持管理に携わる者として、大阪港の赤いシンボル’港大橋’を守っていきたいと思います。

写真:点検の様子
点検の様子
写真:点検の様子
点検の様子
写真:Dr.RINGから見た景色
Dr.RINGから見た景色