兵庫県南部地震(阪神淡路大震災)では、多くの橋梁に被害が生じました。阪神高速道路では3号神戸線と5号湾岸線の計6ヵ所で高架橋の倒壊や落橋が発生しました。この経験から、巨大地震に対する橋梁そのものの安全性向上や地震後のライフラインとしての機能の重要性が再認識されました。兵庫県南部地震以降、想定され得る地震についての見直しが実施され、より強い地震に対応できる橋梁が求められるようになりました。
そこで本橋では、当時主流であった、地震の力に部材の力で対抗する「耐震」だけではなく、力をうまく逃がす「免震」や力をコントロールする「制震」という考えをいちはやく導入しました。本ページではその代表例をご紹介いたします。
港大橋には本体(主構といいます)と道路面(床組といいます)があり、地震が来れば橋はこれら全体の重量を支える必要があります。
港大橋では地震の力をうまく逃がす工夫として、床組(総重量の約40%)を主構から切り離し、スライドできる構造にしています。床組をスライドさせるため、床組を支えている支承という部分をすべり免震支承に交換しました。このように地震の力をうまく逃がす工夫が「床組免震」という技術です。
なお、床組が全く固定されていないと、地震が起きてスライドした際に動いたままになってしまうため、動いた床組を元の位置に戻すため、積層ゴム支承という部材を併設しています。
港大橋では、本体を構成する鋼部材が地震時に圧縮で壊れないために、制震ブレースの設置を長大橋で初めて採用しました。制震ブレースとは、圧縮に弱い部材が座屈(両端から強い圧縮力を受けて、急に面外にひしゃげるように壊れること)を防ぐため、「芯材」と、芯材が座屈するのを拘束する「鋼材」の2重構造になっています。また、地震の際には芯材が座屈しないで伸び縮みすることにより、地震エネルギーを吸収するものです。地震エネルギーは制震ブレースによって消費されるため、他の構造材に及ぶ影響を低減することができます。
フェールセーフとは主な機能が壊れた際でも最低限の機能を担保できるよう、予備的に設置しているもののことを言います。
港大橋の床組は床組免震により、本体と分離してスライドします。そこで、想定以上の地震でスライドし過ぎた際にも、本体から道路面が落ちない構造にしました。道路面が大きく動き過ぎてしまった際には突起が引っ掛かり落ちないような構造にしています。もちろんその突起が壊れてしまっては意味が無いので、高い衝撃緩衝効果を有する積層繊維補強ゴム製という材料を用いた緩衝材を採用して万一の際にでも道路面が落ちない構造にしています。