2023 年度は、新型コロナウイルス感染症の影響が収束し、交通量も以前の水準へと回復しました。その一方で、自然災害の激甚化、資材価格や人件費の高騰など、さまざまな課題が表面化しつつあります。さらに当社事業に関わる交通・モビリティの分野では、CASE※1やMaaS※2など、社会の上部構造が大きく変化しており、下部構造を担う私たちインフラ企業も常に変化していく必要があります。
こうした経営環境の中、阪神高速グループでは中期経営計画(2023~2025)のもと、4つのマテリアリティ(サステナビリティ重要課題)解決に向けた取り組みを行っています。本計画は2025年の日本国際博覧会(大阪・関西万博)に貢献し未来社会を描くためのアクションプランでもあります。ステークホルダーの皆さまのご支援・ご協力を受け、2023年度は順調な滑り出しであったと評価しています。
具体的な取り組みとして、マテリアリティ1「地球環境の保全」では、2023 年1月に改定した「環境ポリシー」「環境行動計画」に基づき、2050年のカーボンニュートラル実現に向け、道路照明のLED 化や太陽光発電をはじめとした再生可能エネルギーの活用などを推進しました。
マテリアリティ2「サステナブルなまちづくり」では、「サステナブル」「インクルーシブ」「レジリエント」の3つをキーワードとして取り組みを進めています。「サステナブル」では、14号松原線喜連瓜破や16 号大阪港線阿波座などのリニューアルプロジェクトを着実に進めており、これまで順調な進捗を見せています。「インクルーシブ」では、関西の多様な都市を1つに結びつけることを目指し、2025年の大阪・関西万博におけるシャトルバスのアクセスルートともなる淀川左岸線(2期)の整備を大阪市とともに進めたほか、大阪湾岸道路西伸部では海上部長大橋(新港・灘浜航路部)の基本構造を決定しました。「レジリエント」では緊急輸送道路としての機能を確保するため、道路の耐震対策や防災訓練などハード・ソフト両面から、安全・安心なまちづくりに取り組んでいます。
マテリアリティ3「事業活動を支える経営基盤の強化」では、冒頭に挙げた資材価格の高騰も踏まえ、デジタル技術などを活用し、経営の効率化を図っていく、ということが1つの重要なポイントです。また、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの観点からは、多様な人材が働きやすい環境を作るため、スライドワークや在宅勤務などを制度化しました。さらに2023年度は高速道路の上限料金の引き上げを発表しましたが、それにはまず私たちの経営姿勢に対するお客さまからのご理解や信頼を得ることが大前提です。そのため、私たちは「先進の道路サービスへ」というグループ理念のもと、効率的な経営やお客さまへのサービス向上に向けた決意を新たにし、多様なステークホルダーの皆さまとの積極的なコミュニケーションに努めました。
マテリアリティ4「業務の変革や新たな価値の創造」では、電気自動車の普及や自動運転化の進行といった社会の変化に対し、インフラを支える私たちならではの価値を提供していきます。具体的には、大阪・関西万博におけるシャトルバスの自動運転実装にあたって、道路側から先読み情報や合流支援システムによる情報提供を行います。また、ETCのネットワークを活用し、大阪・関西万博開催時の渋滞緩和につなげるサービスにも挑戦していきます。
※1 |
CASE…Connected(コネクテッド)、Autonomous(自動運転)、Shared & Service(シェアリング)、Electric(電動化)の頭文字をつなげた造語。 |
※2 |
MaaS…Mobility as a Serviceの略。バス、電車、タクシーなどあらゆる公共交通機関を自動運転技術やAIを活用して結びつけ、人々がシームレスに移動できるようになるシステムのこと。 |