重要テーマ3 世界水準の卓越した都市高速道路技術で発展する阪神高速を目指してメンテナンス時代の到来に先駆けた都市高速道路技術の開発

維持管理のさらなる高度化や効率化、災害に強い高速道路を目指して、
技術力を生かした高品質でより合理的な都市高速道路の技術開発を進めています。

GISを活用した情報共有プラットフォームの開発

阪神高速COSMOSは、阪神高速道路に関連する複数の管理事業情報を集約・統合し、地図上での可視化・重ね合わせを可能にするGISプラットフォームです。本システムは、世界測地系の緯度経度のほか、構造物の管理番号、キロポストなどといった位置情報に関する互換性を持っていることから、さまざまなデータを地図上で重ね合わせて表示することが可能となっています。
これにより、システムが持つ膨大なデータから必要な情報を抜き出し可視化することで、分析作業の効率化・高度化が期待できます。本システムを活用し、構造物の効率的な維持管理や交通管理の高度化など、幅広い分野における情報共有と新たな価値の創造に取り組んでまいります。

COSMOS:Communication Systems for Maintenance, Operation and Service

阪神高速COSMOSの機能イメージ
舗装損傷と鋼床版き裂発生位置の重ね合わせ表示例

サイバーインフラマネジメント技術の開発

阪神高速では2019年より『サイバーインフラマネジメント』を掲げています。現実空間にある橋やトンネルといった道路構造物と同じ性質・挙動を示すモデルをサイバー(仮想)空間に構築し、阪神高速道路を再現します。これをデジタルツインモデルと言います。サイバーインフラマネジメントは、サイバー空間内でさまざまなシミュレーションを行い、そこで得た知見を現実世界に反映する新しいマネジメント技術です。例えば、サイバー空間において、近い将来発生が想定される南海トラフなどの大規模な地震を発生させ、構造物の被災状況をシミュレーションし、得られた結果を現実世界で事前対策や復旧計画の策定に生かしたり、サイバー空間内の構造物に対して将来の劣化シミュレーションを行い、構造物ごとに最適なメンテナンスサイクルを求めたりすることが可能となります。また、シミュレーションのターゲットは構造物だけでなく、発生した被害状況を考慮した通行止めや交通渋滞など阪神高速道路上の交通流への影響評価も可能であることから、防災・減災対策など高度な意思決定にも活用していきたいと考えています。
今後もさまざまな場面を想定したシミュレーションにより新たな価値を創出し、企業理念である「先進の道路サービスへ」の実現に資するサイバーインフラマネジメントを推進していきます。

デジタルツインモデルの例(天保山ジャンクション付近)
サイバーインフラマネジメント構想の概念

VOICE
都市高速道路の防災・減災対策の高度化を目指します

技術部 技術推進室
田中 将登

阪神高速道路は、阪神・淡路大震災により多大な被害を受け、社会に甚大な影響を及ぼしました。私たちには過去の経験を風化させることなく、教訓として受け継いでいく使命があります。阪神高速道路のデジタルツインモデルに関する一つの活用法として、南海トラフ地震などの大規模地震に対する防災・減災対策の高度化に向けた検討に取り組んでいます。今後も高速道路を利用されるお客さまや周辺住民の方々に安全・安心・快適な道路サービスを提供できるようサイバーインフラマネジメントを推進していきます。

車両軌跡データを活用した交通マネジメントの高度化

複雑な「現実の交通現象」を詳細に把握するために、関連するすべての情報を車両軌跡データとしてデジタル化し、多様な道路交通サービスの発展を目的に、プロジェクト"Zen Traffic Data"として外部に公開しています。
このデータをもとに、渋滞や事故の発生状況などを再現し、交通事象の発生メカニズムを解明することによる快適な道路交通サービスの提供や、自動車関連分野における自動運転などの新技術の発展など、幅広く活用されることを期待しています。

点検・検査技術の高度化と効率化

道路構造物の損傷への対策を講じるうえで必要な基礎情報を得るには、点検・検査が必要です。道路メンテナンス2巡目点検を確実かつ円滑に実施するため、点検・検査の高度化・効率化に取り組んでいます。

すべり抵抗調査車両の導入

すべり抵抗調査車両(RT3®Curve)

急カーブ区間は、舗装の劣化に伴い雨天時にスリップ事故が発生しやすい傾向にあります。従来、路面のすべり抵抗を把握するための調査では、交通規制を行う必要がありました。
そこで、交通規制を伴わず、車両を走行させながら連続的にすべり抵抗を把握できる、米国で開発された車両「RT3®Curve」をベースに、車両構造改造、位置情報を把握するソフトウェアの開発、動画撮影機能の付加など、阪神高速道路にあわせた改良を独自に行い、すべり抵抗調査車両を導入しました。
現在、本車両の走行による継続的なデータ取得を進めており、調査から得られたデータを分析することで交通安全対策・維持管理の高度化・効率化を目指します。

ドクターパト®による路面点検

「ドクターパト®」は、搭載したラインスキャンカメラやレーザー変位計などで、路面の性状調査(ひび割れ、平坦性、わだち掘れ)を、規制速度で走行しながら調査できる舗装点検専用車両です。走行しながら調査することで、お客さまにご迷惑をおかけする交通規制を回避することができます。また、ひび割れ率を自動的に算出できるようにすることで効率化・コスト削減を図っています。阪神高速ではこれまで培ってきた知見をもとにさらなる路面点検の技術開発に取り組んでいきます。

工事騒音を軽減する技術の採用

低騒音工法の採用

IH式鋼床版舗装撤去工法による舗装撤去

都市部に位置し、交通量の膨大な阪神高速道路では、交通への影響が大きい日中ではなく、夜間に工事を実施する場合が多くあります。しかし、夜間の工事では沿道地域への工事騒音が問題となります。このため、工事騒音を大幅に低減でき、かつ工事時間も短縮できる技術の開発に取り組んでおり、ジョイント低騒音撤去工法(SJS工法※1)やIH式鋼床版舗装撤去工法※2といった新たな技術を採用しています。

  • 1:ジョイントを特殊なワイヤーにより一括で切断し、撤去する工法
  • 2:電磁誘導加熱技術(IH)により、鋼床版を発熱させ、舗装下面の接着層を軟化させることで舗装を剥ぎ取りやすくする工法

非破壊検査技術の開発

鋼板接着コンクリート床版損傷スクリーニング技術の開発

開通後40年以上経過した一部の鋼板接着補強床版では、大型車両の繰り返し走行による疲労により、コンクリートの砂利化や内部ひび割れなどの損傷が発生していますが、鋼板が接着されているため、内部の劣化状況が把握しづらいという課題があります。このため、車両通過時にコンクリート床版内部から発生する微小な波動であるAE(アコースティックエミッション)をセンサーで捉え、床版の劣化損傷位置情報を得ることによって、健全性を評価できる非破壊検査技術の開発に取り組んでいます。