重要テーマ3 世界水準の卓越した都市高速道路技術で発展する阪神高速を目指してメンテナンス時代の到来に先駆けた都市高速道路技術の開発
維持管理のさらなる高度化や効率化、災害に強い高速道路を目指して、技術力を生かした高品質でより合理的な都市高速道路の技術開発を進めています。
- 関連するSDGsの目標
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- GISを活用した情報システムの開発
- データがつなげるシームレスなインフラマネジメント~計画・建設から維持管理・更新まで~
- 車両軌跡データを活用した交通マネジメントの高度化
- 点検・検査技術の高度化と効率化
- 工事騒音を軽減する技術の採用
- 非破壊検査技術を活用した点検技術の現場実装化
GISを活用した情報システムの開発
「阪神高速COSMOS」※は、阪神高速グループが保有する膨大な道路管理データを地図上で集約、展開することのできる情報システム群です。本システムは、世界測地系の緯度経度のほか、構造物の管理番号、キロポストなどといった位置情報に関する互換性を持っていることから、さまざまなデータを地図上で重ね合わせて表示することが可能となっています。これにより、システムが持つ膨大なデータから必要な情報を抜き出し可視化することで、分析作業の効率化・高度化が期待できます。
本システムを活用し、道路構造物や設備の効率的な維持管理、道路交通管理の高度化、迅速な災害対応活動の支援など、幅広い分野における情報共有と新たな価値の創造に取り組んでまいります。
COSMOS:Communication Systems for Maintenance, Operation and Service
データがつなげるシームレスなインフラマネジメント
~計画・建設から維持管理・更新まで~
阪神高速では2021年7月に「DX戦略」を策定し、その基本方針に沿ってDXを推進しています。具体的な取り組みの一つに「CIM」※の適用があります。
CIMは、調査・計画段階などのライフサイクルの上流工程から3次元モデルを導入することで、その下流工程の設計、施工、維持管理の各段階においても3次元モデルを連携・発展させ、事業全体で関係者間の情報共有を容易にし、一連の建設生産システムの効率化・高度化を図ることを目的としています。
阪神高速の建設(事業)中路線においても積極的にCIMを活用し、設計および施工の可視化・整合性の確保、判断の迅速化(工程遵守)、構造物情報の一元化・統合化を図っていきます。
CIM:Construction Information Modeling/Management
車両軌跡データを活用した交通マネジメントの高度化
複雑な「現実の交通現象」を詳細に把握するために、関連するすべての情報を車両軌跡データとしてデジタル化し、多様な道路交通サービスの発展を目的に、プロジェクト「Zen Traffic Data」として外部に公開しています。現在、国内外あわせて60以上の組織で活用していただいています(2022年3月末現在)。
このデータをもとに、渋滞や事故の発生状況などを再現し、交通事象の発生メカニズムを解明することによる快適な道路交通サービスの提供や、自動車関連分野における自動運転などの新技術の発展に、幅広く活用されることを期待しています。
点検・検査技術の高度化と効率化
道路構造物の損傷への対策を講じるうえで必要な基礎情報を得るには、点検・検査が必要です。道路メンテナンス2巡目点検を確実かつ円滑に実施するため、点検・検査の高度化・効率化に取り組んでいます。
ドクターパト®2.0の導入・活用
「ドクターパト®2.0」は、交通規制を実施することなく、舗装・伸縮装置・トンネルを高速走行しながら点検することを目的に導入した車両です。この車両に搭載する特殊照明によって、舗装の表面やトンネルの覆工面に発生しているひび割れなどの損傷の検知が容易になります。さらに、路面のカラー画像が取得できるため、伸縮装置に生じているさび・腐食などが視認しやすくなります。
阪神高速グループでは「ドクターパト®2.0」を活用することなどにより、路面や構造物、設備や施設に発生する変状の予兆を捉え、早期補修を行う取り組み(予知保全)を推進していきます。
UAV※を活用した点検の試行
道路構造物の健全度評価の高度化や点検の効率化に向けて、水上や山間部の斜面など、構造物の近接目視が難しい箇所を対象にUAVを活用した点検を試行しています。
今後は近接目視と同等の点検・診断をUAVで行うことができるかを検証するとともに、効率的な点検に向けてUAV技術のインハウス化にも取り組んでいきます。
UAV:Unmanned Aerial Vehicle(無人航空機)
工事騒音を軽減する技術の採用
低騒音工法の採用
都市部に位置し、交通量の膨大な阪神高速道路では、交通への影響が大きい昼間ではなく、夜間に工事を実施する場合が多くあります。しかし、夜間の工事では沿道地域への工事騒音が問題となります。このため、工事騒音を大幅に低減でき、かつ工事時間も短縮できる技術の開発に取り組んでおり、「ジョイント低騒音撤去工法(SJS工法※1)」や「IH式鋼床版舗装撤去工法※2」といった新たな技術を採用しています。
- 1:ジョイントを特殊なワイヤーにより一括で切断し、撤去する工法
- 2:電磁誘導加熱技術(IH)により、鋼床版を発熱させ、舗装下面の接着層を軟化させることで舗装を剥ぎ取りやすくする工法
非破壊検査技術を活用した点検技術の現場実装化
鋼板接着補強RC床版の内部損傷範囲推定技術の開発
開通後40年以上経過した鋼板接着補強RC床版では、大型車両の繰り返し走行による疲労蓄積により、コンクリート部に内部ひび割れや砂利化などの損傷が発生している箇所があります。しかしながら、床版底面に鋼板が接着されているため、内部の劣化状況の把握が目視点検では困難です。このため、車両通過時にコンクリート内部から発生する微小な波動であるAE(アコースティックエミッション)をセンサーで捉え、床版の劣化損傷程度を把握することで、床版の健全度を評価する非破壊検査技術を活用した点検技術の現場実装化に現在、取り組んでいます。