ここまで「電気・電子・通信系」「機械系」「建築系」という3つの職種にフォーカスし、仕事の内容を詳しく伺ってきましたが、3職種は個別に完結する仕事ではありません。職種間での緊密な連携は良い仕事をする上での必須条件です。そこで日頃みなさんは、仕事でどのような部署や職種の人と関わり、どのように協力しあっているのでしょう。社内外の連携について、教えてください。
いちばん接点があるのは、土木構造物の設計を手がける建設部門の技術者の方たちです。また、いま設計を手がけている淀川左岸線2期・延伸部は、合併施行方式で事業が進められていて、大阪市や国土交通省とも緊密に連携し、意見調整をはかりながら設計を進めています。
建築も、土木の部署と調整しながら仕事を進めるケースが多いですね。阪神高速は、ほとんどが高架道路なので、トンネル内の空気を浄化し排出する換気所や料金所、PAなどの施設が、土木構造物の真上や付近に建設されることが多く、設計段階で土木設計との調整は必須です。工事の段階でも、土木工事の進み具合や工程を把握した上で進めています。
土木とは、切っても切れない関係ですね。
また料金所やPAが完成すれば、多くのスタッフがそこで仕事をすることになります。そのため建物を運用する部署とも、設計段階から内部の構造や部屋のレイアウトについて意見の擦り合わせが必要です。さらに建物の維持管理にあたるグループ会社との調整もあります。建物を建て、運用し、維持管理するというライフサイクルのさまざまな場面に関わる部署、多くの人たちとの連携があってはじめて私たちの仕事は成立します。
電気・電子・通信でも、実際に設備を使って仕事をされる方たち、例えば交通管制センターの交通指令や管制員に設備の仕様について説明したり、意見を伺うことは多いですね。また電気・電子・通信部門の中でも、私たちが策定した基準にそって設計したり、発注や工事の監督にあたる部署、維持管理を担当する部署との調整も必要ですし、もちろん土木部門やグループ会社とのやり取りもあって、数えきれない部署の方たちと接点を持ちながら仕事をしています。
今回取り上げている3職種(「電気・電子・通信」「機械」「建築」)間の連携については、どうですか?
例えば料金所には電気通信設備、とりわけETC関連の設備が多く設置されるので、社内基準に定められた間隔や数量をすべて取り付けるだけのスペースを確保できるかどうかとか、建築の技術者と調整します。また機械系との接点でいえば、トンネルの換気所には排風機をはじめ大型の機械設備がいくつもあって、大量の電力を安定供給するための受配電設備の仕様についての打合せも行ないます。
3職種のうち2職種の連携はごく日常的にあって、換気所のような施設建設の場合は、3職種すべてが絡んで仕事を進めていく場面が多いことが分かりました。
そうですね。3職種間の連携という意味では、建設の場面が最も分かりやすい例といえます。
ここまでの会話で、私たちは「連携」という言葉を何気なく使ってきましたが、これを読んでくださっている方の中には、「連携」の具体的中身をイメージしにくい人がいるかもしれません。そこで具体的に職種間の連携作業はどういうものか、それを次に伺いたいのですが。
先ほど話に出てきた換気所を例に話せば、コンクリート構造物の場合、電気配線を通すことのできる場所は限られていて、設計段階でスリーブ※の位置や数量、配線ルートを決定しています。設計としては、その図面通りに工事をしてほしいのですが、機械設備の仕様が変更され、スリーブの位置や配線ルートをどうしても変更しなければならないケースがあります。
※スリーブ:電気配線を通すためにコンクリートに埋め込む円形の筒
高井 啓行(建築系)
そこで調整が必要になるわけですね。
はい。時間は無限にあるわけではなく、供用開始の時期はすでに決まっています。そこから逆算していくと、土木・電気・機械からの変更要望のすべてを反映する余裕はありません。そんな時、建築・機械・電気・土木の各担当が集まり、限られた時間の中で何をすべきか、何ができるかを話し合い、各担当者間で相互に許容できる着地点を見つけ出していきます。職種間の連携は、工事の段階でより一層深まりますね。
換気所のケースでいえば、建物の工事が先に進んでしまったために、内部に備え付ける機械設備の設計が間に合わず、設備が重量オーバーしてしまい、設計変更を余儀なくされた苦い経験があります(苦笑)。軽量化のために本来なら鉄でつくるべきものをアルミで代替し、どうにか解決しましたが、その分コストは余計にかかりました。仕事のワクを超えた連携は、良いモノづくりを進める上で欠かせない条件です。
阪神高速では、今、働き方改革に向けて部門間の相互コミュニケーションを重視しています。そうした観点から、意思疎通が円滑に進むよう、何か工夫されていることはありますか?
工夫というわけではありませんが、例えば設計変更があって建築サイドから電気・機械・土木などの関係部署に修正を依頼したり、要望を伝える時は、その設計変更が相手サイドにどのような影響をおよぼすのかを十分に認識した上で、依頼なり要望なりを行なうように心がけています。また逆に関係部署から設計変更の依頼があった時は、なぜその変更が必要で自部署だけでなく、お客さま、社内外関係部署への影響を想定したうえで応じるようにしています。縦割りを廃し、全体最適化にむけて関係部署が互いの立場を思いやりながら緊密に連携しあうことが大切だと思っています。
『調整の仕事では、相手の立場に立って考えること』と、かつて上司からしきりにいわれたのを思い出します。
まったく同感ですね。どこからどこまでが仕事の範囲なのか、すべてを明確に区分けできるわけではありません。それぞれの部署が、職種のワクを超えて連携し、全体最適をめざしてベクトルをひとつにする。そんな意識を常に持ちながら仕事に取り組むことが大切だと思います。
(昨今のコロナ禍等の影響もあり)リモートワークが進めば進むほど人間関係は希薄になりがちです。社員同士のコミュニケーションが、これからますます重要になるでしょう。ただ阪神高速道路は、社名から受ける印象とは裏腹に、とてもアットホームな会社。先輩や上司が何かと声をかけてくださるし、私自身も後輩とすすんで対話するように心がけています。社風の良さは、就職活動で会社訪問していた時から感じたことでもあり、十数年が過ぎた今もその印象は変わっていません。