Cross Talk Round 5

忘れられない記憶~練りに練った看板更新大作戦。生涯の記憶に残る大和川線工事。~

長澤 稔郎
コーディネーター 長澤

座談会もいよいよ終盤です。締めくくりの前に、長いキャリアの中で思い出に残っている仕事や、記憶に刻まれたプロジェクトの話を聞かせていただけませんか。

高井 啓行
建築系
高井

大きな建物や社会的に意義ある施設の建設に技術者として関わるのは大きなやりがいで、私にとってはどれもが印象に残る仕事です。記憶に新しいところでは、2017年6月に料金体系が対距離制に改められることになり、全線で150所余りある料金所の表示板を一夜にしてすべて取り替えた時のことが鮮明に甦ってきます。

長澤 稔郎
コーディネーター 長澤

150カ所を一晩で!
いったいどんな作戦を立てたのですか。

高井 啓行
建築系
高井

前もって新料金の表示板の取り付けを完了しておき、その上に旧料金を書いたシートをかぶせ、当日の夜にシートを一斉にはがしていくという方法をとりました。営業所のスタッフも含めて数十名の方にご協力いただき、5つの班をつくって手分けして作業にあたることで、どうにか計画通りにやり終えることができました。事前に取替工事ができない料金所はどうするのか、班ごとにどんなルートで巡回するかなど課題は数えきれないほどありました。万が一のトラブルも、想定しておく必要もあります。失敗が許されないプレッシャーの中での夜間の大作戦でしたが、そこから学んだことも多く、得難い経験だったと思っています。

畑本 啓吾
機械系
畑本

私は、2020年3月に全線開通した大和川線の建設に携わったことが、いちばんの思い出です。新規路線の建設は5年10年という長丁場。最初から最後まで同じ現場で仕事をすることは珍しく、途中から参加するケースが多いのですが、途中参加だと何がどこまで進んでいるのか、現状把握だけで時間がかかります。この時も、そうでした。配線・配管が膨大で、資料を見ても解読不能。だから苦労は数えきれないほどありましたが、自分の手がけたものがこれから先、長くそこにあり続けると思うと大きな感動があります。長期に及ぶ工事は、恐れず立ち向かう気構えが大切。苦労以上に、やりがいを感じたプロジェクトでした。

井奈波 剛史
電気・電子・通信系
井奈波

私も工事監督として関わった大和川線を真っ先に挙げたいと思います。畑本さんと同じく、途中からの参加でしたが、私の場合は全線開通の瞬間までを見届けることができました。スケジュールが押しに押して、限られた時間の中で電気通信工事の工程管理と品質管理を行ない、安全管理にも目を配らないといけない状況で、工事期間中は大忙しです。しかも途中から工事を引き継いだので、畑本さんが言われたように、進捗状況を把握するだけでひと苦労。それでも担当の工事をどうにか終わらせることができ、しゅん工の日を迎えることができて、達成感もまたひとしおでした。事業開始から四半世紀を要した大事業に関わることができて、私にとっては生涯の記憶に残る経験でした。

長澤 稔郎
コーディネーター 長澤

10年を超える長いキャリアの中で、失敗の経験はありましたか。

高井 啓行
建築系
高井

失敗ではありませんが、一度発注した工事を、途中で一時中止したことがありました。阪神高速では南海トラフ巨大地震へ備え、自社の管理社屋等に津波浸水対策を実施しています。具体的には防潮板の取り付け、駐車場の立体化、受電所更新時の地上整備等をいくつかの工事に分けて進めてきました。これらの工事を限られた敷地で同時に工事するため工程管理上、一部の工事を一時中止するほうが全体工程の進捗上、望ましいという判断に至りました。

長澤 稔郎
コーディネーター 長澤

その時は、どんな思いでしたか?

高井 啓行
建築系
高井

設計・発注に携わった工事が中止となるのはやはり、悔しい思いです。ただ、そこは切り替えて一時中止期間の想定や再開目途を先行工事の工程を見据えながら受注者や社内の調整に注力しました。工事に関わらず設計も含め、想定外の事象により大幅な変更や今回のような一時中止といったことが発生します、今回の経験を活かせるよう工事中止に至った経緯や課題を洗い出し、今後に向けた反省材料として改善すべきところは改善していきたいと思っています。

長澤 稔郎
コーディネーター 長澤

高井さんの悔しい思いも含めて、さまざまな経験がいくつも積み重なって、技術はさらに研ぎすまされていくのでしょう。その意味で、失敗や挫折も技術の進化に必要なプロセスなのだと私は思います。

長澤 稔郎
コーディネーター 長澤

施設系技術職の仕事について、幅広いテーマでお話を伺ってきた座談会も、いよいよエンディングを迎えました。最後に、この記事を読んでくださっている未来の技術者の方たちへ、メッセージをお願いします。

井奈波 剛史
電気・電子・通信系
井奈波

電気・電子・通信系技術者は、電気・電子・通信にまつわるシステムや設備の設計、工事、維持管理に関する発注・管理・調整など、幅広くマネジメントする仕事に携わっています。また、発注者として時代を先取りする技術にチャレンジしたり、社外の企業などと手を携えて、共同で新たな技術開発に取り組んだりする仕事も経験できます。多くの企業の情報に触れる中、そんな阪神高速道路ならではの技術職の仕事に少しでも興味が湧き、あなた自身の志向ともマッチすると思えたら、ぜひ当社の扉を叩いてほしいと思います。

畑本 啓吾
機械系
畑本

2005年に民間の事業会社としてスタートした阪神高速道路は、今まさに変化の途上にある会社です。まだまだ変わりきれていないところがあるかもしれませんが、会社をより良いものにしていこうという社員の思いは共通です。阪神高速道路の技術職は、幅広い範囲の仕事を任されます。機械系も例外ではありません。外部の専門家も含めた関係部署との折衝や調整がメインの仕事だけに、対人能力や全体をコーディネートしたり、マネジメントする力を磨くには持ってこいの仕事です。この座談会が、そんな阪神高速道路の技術職の姿を知るきっかけとなり、みなさんが本当の意味で自分にあった仕事を見つけ出されることを願っています。

高井 啓行
建築系
高井

建築部門でも、技術者は社内外を問わず様々な専門分野の実務者と接点を持ち、それぞれの知識やスキルをコーディネートしながら、ひとつのものをつくり上げる仕事をしています。そこで大事なことは、異分野の専門家や実務者の視点に立って考え、判断すること。それがより良い建築の実現につながります。就職活動では、悩みも多いと思います。技術をひたすら掘り下げ、奥深いところへ分け入ることに喜びを見つける人がいれば、技術のことは専門家にまかせ、その力をひとつにまとめあげてモノづくりすることに喜びを発見する人もいるでしょう。何が本当に自分にあった仕事なのか。多くの企業の情報を集め、先輩たちから話を聞き、進むべき道を見つけ出してください。

長澤 稔郎
コーディネーター 長澤

畑本さんがいわれる通り、阪神高速は今まさに生まれ変わる過程にあって、これからもっともっと変わっていかなければなりません。それを先頭に立って推し進めていくのは、これから技術者を志す若い世代の方たちです。また井奈波さんや高井さんの発言にあった「コーディネートするチカラ」や「マネジメントするチカラ」も、私たち阪神高速が持っている大切な“技術のチカラ”です。

阪神高速の技術職の仕事について少しでも認識し、『会社を自分の力で変えてやろう』という気概を持った人が現れてくれることを、私たちは待ち望んでいます。