都市が発展するにつれ人や物の流動が増大し、生活や経済を支える阪神高速道路の役割は、ますます重要になってきています。
阪神高速道路の営業路線は、現在240kmを超えていますが、各所で交通が集中することによる渋滞が発生しています。渋滞が発生すると道路交通の処理能力が低下し、ドライバーは時間的損失を受けるばかりでなく、安全性や快適性も阻害されることになります。
そこで阪神高速道路では、常に円滑な交通流を維持し、道路の機能を最大限に発揮させるとともに、安全で快適な走行を確保することを目的として、交通管制を行っています。
全路線を大阪地区と兵庫地区の2箇所の交通管制センターで管理しており、交通管制センターには、各種情報を処理するコンピュータ(中央処理装置)室と高速道路の安全を見守る交通管制室が設置されています。交通管制室では、コンピュータで処理された道路交通情報やカメラ映像などが映し出され、管制員がグラフィックパネルやテレビモニターなどで高速道路の状況を常時監視しています。事故、故障、落下物が発生したときは迅速かつ安全に対応を行います。
平成4年5月7日:土木学会関西支部技術賞を受賞
平成4年5月28日:土木学会技術賞を受賞
平成6年4月24日:フランツ・イーデルマン賞を受賞(米国経営工学会及びOR学会共催)
平成15年12月5日:関西道路研究会優秀作品賞
阪神高速道路の交通管制システムは、車両検知器などの情報収集装置からの情報や、他の関連するシステムからの情報など、交通流に関するあらゆる情報を収集し、中央の情報処理装置で処理しています。これらの情報をもとに、渋滞の悪化を防止するための情報提供や、渋滞を早期に解消させるための入口制御を行っています。また、事故や故障車などの交通障害にも迅速に対応して、速やかに正常な交通流に回復させるための交通管理の支援も行っています。
【車両検知器】
本線上に500m間隔で設置し、超音波の反射波を利用して、交通量と時間占有率を計測します。これらの交通データは、渋滞長と所要時間の算定に用いるとともに、交通の急激な変化を捉え、管制員に迅速に報告する突発事象検知の機能も有しています。
【テレビカメラ】
本線上で見通しの良い場所に設置し、交通状況を視覚で確認するためのものです。現在、視認範囲は全路線の約8割をカバーしています。
【車両番号読取装置(AVI)】
本線の上流側と下流側にCCDカメラを設置し、走行中の車両番号を読み取って照合し、カメラ設置区間の平均所要時間を算出します。このデータは、乗継区間の所要時間の算出に用いています。
【突発事象検出カメラ】
曲線部などの見通しの条件が悪い区間にCCDカメラを設置し、画像処理技術を応用して事故、故障車や渋滞の後尾車両などの突発事象を、約2秒で自動検出しています。
【交通状況モニター装置】
管制室には、グラフィックパネルやフリーパネル、テレビモニターおよび管制卓などの交通状況モニター装置を設置しています。
これらの装置により、管制員が迅速な交通管理業務を行うことができるようになっています。
【コンピュータ】
交通管制センターのコンピュータ室に設置され、各種情報を処理しています。
【文字情報板(約500面】
本線上や入口、入口付近の街路に設置し、渋滞情報や障害情報などを文字やシンボルで表示しています。なお、路線延長が長い箇所には、図形方式所要時間表示板を設置するとともに、環状線に合流する手前には図形情報板を設置するなど、様々な形式の情報板で交通情報を提供しています。
【経路比較情報板(7面)】
ドライバーの皆様に最適なルート選択を行って頂くための情報として、走行中の路線から主要地点までに複数の経路がある場合、それぞれの経路にかかる所要時間を表示しています。
【道路情報ターミナル】
大型パネルやモニターなどを、主要パーキングエリア内に設置し、ドライバーの皆様が、車から降りてタッチパネルを操作することで、文字や画像等により、道路情報のみならず道路に関する様々な情報をゆとりを持って得られるようになっています。
阪神高速道路には、昭和44年(1969年)に初代の交通管制システムが導入され、平成2年(1990年)には、所要時間提供などの種々の機能を拡張した交通管制システムの運用を開始しました。
さらに、平成15年(2003年)には現行システムとなる交通管制システムの運用を開始し、情報の更新周期を従来の5分から2.5分に短縮するなど、下図の通り、多くの新たな機能を導入しています。
情報の更新周期をこれまでの5分から2.5分としたことにより、渋滞原因がより早く提供され、渋滞長の変化がよりきめ細かく提供されるようになりました。
複数路線にまたがる渋滞の通過時間を、道路情報ラジオで提供できるようになりました。
渋滞がJHの道路を先頭に阪神高速道路まで延伸したときは、全体の渋滞長や渋滞通過時間を、道路情報ラジオで提供できるようになりました。
携帯電話からの連絡では、橋脚番号や照明柱番号、キロポストなどを告げてもらうことにより、通報者の位置を検索できるようになりました。
管制室のグラフィックパネルには、関連道路を含めた広域道路網の情報を表示できるようになりました。
規制工事調整システムと接続したことにより、工事の作業内容、規制車線数、開始・終了時間などの入力作業が軽減されることになりました。
交通データ、事故、故障などの障害データ、環境データなどを5年間蓄積し、簡単に検索し、分析することができるようになりました。
情報収集においては、超音波式の車両検知器を使用しています。これは、超音波を検知器より発生させ、道路面側からの跳ね返りによる所要時間により、車の判定を行うものです。これらの検知器から各区間の所要時間を算出する際、当社では車両検知器1器で、車両占有率と交通量から速度を求め、所要時間を算出しています。また、これらの検知器を追越車線のみ設置することで、機能としては必要十分なサービスレベルを維持しつつ、非常に低コストなシステムとなっています。
渋滞検知のしくみ
本線上に設置された車両検知器により5分間の交通量と交通密度(オキュパンシ)を計測し、渋滞判定を行っています。車両検知器は500m間隔に設置され、それぞれの区間で渋滞の有無を判定します。
所要時間算出のしくみ
車両検知のデータから、区間ごとの平均所要時間を算出し、それらを合計したものが所要時間情報としてドライバーへ提供されます。時間は5分単位で切り上げした数値で表示されます。
情報提供機能のさらなる強化として、平成21年12月より入口手前に設置している情報板において交互表示機能を導入しています。本機能の導入により、今まで一つの情報しか表示出来なかった情報板でも、複数の情報を提供することが可能になりました。
現在提供している所要時間情報についても、さらなる情報精度向上に向けた検討を進めるとともに、ドライバーの皆様に、現在の渋滞状況を的確に掴み、最適な経路選択をして頂くためのサービスとして、入口手前情報板での所要時間傾向表示について検討しており、現在、提供開始に向けて鋭意研究開発を進めております。