13号東大阪線の法円坂付近は、延長約330mにわたって歴史的に貴重な文化財である難波宮史跡上に立地しています(写真-1)。
このため、同区間の建設にあたっては、難波宮史跡の保全のために基礎部の負担軽減や、隣接する大阪城に対する景観面への配慮を目的に、一部区間が平面構造、またその両隣の高架区間(西側区間:10径間、東側区間:9径間)は、径間(約10m)が幅員(約16m)より短い特殊な構造が採用されており、その多くは単純桁でした(図-1参照)。
構造物への負荷が大きくなる大型車の日交通量は、供用開始時の1978年は約6,000台でしたが、1980年代中ごろには約14,000台と倍増し、供用から2012年までの累積大型車交通量は、約1億7千2万台に達していました。
写真-1 当該区間の状況
図-1 当該区間構造図
この区間では、1991年に支承の近傍の主桁に疲労き裂損傷が発見されたことから、1993年にあて板等による補強工事を実施されましたが、2010年にこの補強箇所を含め、数多くの疲労き裂損傷が新たに発見されました(写真-2)。
(これらの損傷のうち、特に重篤な損傷と判断された箇所については、発見直後に緊急措置を実施し落橋等の危険を回避しました)
写真-2 当該区間の状況
このように繰り返し同様の損傷が発生した原因を検討した結果、当該区間の構造は以下の問題を抱えていることが分かりました。
特殊な構造形式のため、大型車などの交通荷重の影響を受けやすく、疲労に対して脆弱であった。
短径間かつ多くの単純桁からなる構造のため、走行性や周辺環境(振動・騒音)において問題があった。
非常に狭い空間(狭あい部)が生じるため、点検が困難な箇所が発生していた(写真-3)
写真-3 点検の困難な狭あい部
(a)2支承線(当初の構造)
(b)1支承線化(変更の構造)
図-2 1支承線化による連続化
これらの問題点を考慮して補修方法には、分割されていた床版・桁・支承をそれぞれ一体化された構造に取り替える「1支承線化による連続化工法」(図-2参照)を我が国ではじめて採用しました。
この構造改良により、前述の問題点は以下のように解消されます。
以下の理由から、疲労損傷発生リスクの大幅な低減が期待できる。
48車線分の伸縮装置が撤去されるため、伸縮装置部の段差を起因とした振動・騒音の抑制につながり沿道環境が改善されることに加え、路面走行性が向上する(図-3)。
伸縮部からの漏水が原因の腐食損傷の防止や、支承周りの点検が容易になる。
図-3 走行性・周辺環境の改善
本工区付近は、大規模医療機関や官庁施設が集積している地域であり、阪神高速東大阪線ならびに併走する中央大通は大阪府内屈指の交通量が発生している路線のため、1支承線化による連続化の施工(図-4・写真-4)に伴う交通流の影響は、広域に発生することが予測されました。
図-4 1支承線化による連続化の施工概要図
写真-4 1支承線化による連続化の施工
そこで、以下の工夫を行い、工事による影響を最小限に抑えました。
東大阪線で実施が予定されていた『フレッシュアップ工事 ※参考1』期間中に、他補修工事と合わせ集中的に実施することにより、交通への影響を最小限に抑えました。なおフレッシュアップ工事の採用により、通常164日間の規制工事(施工期間は3年)が必要でしたが、8日間に短縮されました。
既存の鋼製高欄部を存置することで「中央大通」側に張り出す工事足場が不要となり、その結果、「中央大通」の固定規制が不要になりました (写真-5)。これにより工事期間中の「中央大通」への交通流の影響を最小限に抑えました。
工事実施前に路面規制することなく施工が可能な作業を何度も検討することで、フェレッシュアップ工事期間中の作業の短縮化を図りました(写真-6)。
写真-5 施工面での工夫(連続化施工範囲の選定)
写真-6 施工面での工夫(事前作業の実施)
本工法のポイントをまとめると以下の通りとなります。
ある路線または区間を短期間・集中的(概ね8昼夜間連続)に通行止めを行うことで、安全かつ効率的に補修する工事手法で、阪神高速では1973年より実施しています。短期間に数多くの工事を実施できるため、通常の車線規制工事と比較し、交通影響や工事費の面で優れています。さらに、工事の施工性がよいことから、品質管理や安全面でも優れています。
通常行われる主桁連結化(または床版連結化)は落橋防止など、耐震性能向上や走行性の改善を期待して実施されます。このため、主桁もしくは床版は連結化しますが、支承は2支承線のまま存置されます。さらに施工上すべての鋼桁を連結化させない点も、今回の1支承化による連続化工法と異なります。