近年、建設業における環境負荷低減の視点から、塗装施工においてもその対策が求められています。塗料・塗装における環境対応に望まれるものとして、揮発性有機化合物(以下VOC:volatile organic compounds)とPRTR物質(トルエンやキシレン等特定化学物質の環境への排出量の把握および管理の改善促進に関する法律における指定物質)の削減が挙げられます。
淀川左岸線の高見工区では、鋼桁の工場塗装において弱溶剤型塗料および低溶剤型塗料を使用することで、環境負荷低減に努めました。
現地で行われる塗装塗り替え工事では、近年弱溶剤型塗料が主流になってきました。弱溶剤型塗料は弱溶剤で希釈可能な塗料の総称で、第3種有機溶剤である脂肪族炭化水素系有機溶剤(ミネラルスピリット等)を主成分とし、第2種有機溶剤(アセトン、トルエンなど)が5%未満の塗料です。弱溶剤塗装は、一般的に臭気がマイルドで環境へ与える有害性は小さいですが、建設時の新規塗装における採用は全国的に少ないのが現状です。というのも、弱溶剤塗装は、VOCに使われているミネラルスピリットの影響で乾燥時間が長くなる傾向があり、製作工場における養生や乾燥時間が増加し、製作ラインの効率が低下する恐れがあるからです。
本工事では種々の課題を検討し、2径間連続のランプ桁(写真-1)の外面の工場塗装に弱溶剤型塗料を使用し、PRTR対象物質の削減に努めました。強溶剤型塗料と比較した弱溶剤型塗料の主な特徴を表-1に示します。弱溶剤塗料は直接的にVOCを低減するとともに、さらにPRTR対象物質の大幅な削減により、環境負荷の低減を可能にします。
塗装作業(写真-2、写真-3)は夏場に実施したこともあり、乾燥時間は強溶剤と差がありませんでした。また、塗装作業者の聞き取り調査においても、作業時のトラブルとして発生するエアレススプレーの詰まりや、塗装面への塗料の乗り、むらやダレなど、強溶剤と変わらず施工性に問題はありませんでした。一方、強溶剤に比べて作業時の臭気が低いため、作業がしやすいと概ね良好な意見を得ています。
表-1 弱溶剤塗料の特徴
写真-1 環境負荷低減塗装の対象桁
写真-2 ミストコート完了時
写真-3 外面上塗塗装時
桁の内面塗装についても弱溶剤型塗料の採用を検討しましたが、弱溶剤型塗料は、強溶剤型に比べて内面仕様に求められる没水耐水性の面で劣る性質があります。そこで、水門や水輸送管内面などの没水環境構造物を対象に使用されている低溶剤型変性エポキシ樹脂塗料を使用し、VOC削減に努めました。低溶剤型塗料は一般塗料に比べて塗料中の溶剤含有量が少ないことが特徴です。強溶剤型塗料と比較した主な特徴を表-2に示します。施工性等においては一般の塗料と違いが無く、強溶剤型塗料と同様の施工が可能です。
表-2 低溶剤塗料の特徴