波形鋼板ウェブPC橋は、通常のPC箱桁のコンクリートウェブを波形鋼板に置き換えた鋼コンクリート複合構造で、主桁自重の軽減や、効率よくコンクリート部材へプレストレス導入が可能となるなどの利点があります。
この橋梁形式は、1980年代にフランスで開発され、7号北神戸線の西宮山口南ランプ付近の中野高架橋で採用しました。
本橋を建設していた2002年当時は、国内では、完成済の同形式橋梁が3橋のみという新しい橋梁形式です。
写真:施工状況(2002年3月当時)
図:波形鋼板ウェブPC橋の概念図
中野高架橋の建設では、それまでに建設された波形鋼板ウェブPC橋には無かった新たな取り組みを行っています。ここでは、その主な取り組みを紹介します。
中野高架橋は、波形鋼板ウェブPC橋としては、初めての本格的な曲線橋であり、曲線半径は、本線橋でR=440m、ランプ橋でR=250m(最小半径)となっています。波形鋼板ウェブPC橋は、コンクリートウェブを有する通常のPC箱桁橋と比べてウェブ剛性が小さく、断面変形やそり応力が大きくなることが懸念されたため、横桁間隔の設定など、設計上の配慮を行い対応しました。
図:中野高架橋 全体平面図
従来の波形鋼板ウェブPC橋では、鋼板製のウェブには、塗装仕様が用いられていました。中野高架橋は、鋼材の腐食環境が比較的穏やかな北神戸線に架設されることから、この鋼板に、将来の塗装塗替えの必要が無い無塗装耐候性鋼板を採用し、維持管理の合理化を追求しました。
波形鋼板ウェブPC橋では、鋼板製のウェブと、コンクリート製の上床版・下床版を、いかに接合するかが構造上の大きなポイントと言えます。国内の従来の事例では、鋼橋(合成I桁橋など)に準じた(1)フランジ+スタッド方式か、フランジを持たない(2)埋込み方式が一般的でした。中野高架橋では、前者のフランジ+スタッド方式を基本としながらも、ずれ止めにパーフォボンドリブ(孔あき鋼板ジベル)を併用することでスタッド本数を減じた合理的で新しい接合方法(3)フランジ+スタッド・パーフォボンドリブ併用方式を採用しました。
※パーフォボンドリブ接合とは、コンクリート中に埋め込まれた孔あき鋼板において、鋼板の孔に充填された円柱状のコンクリートがジベルとして作用するものであり、ドイツのレオンハルトにより提唱された接合方法です。
図:鋼ウェブとコンクリートフランジの接合方法