阪神淡路大震災時にマンホールが地上に飛び出している光景が見られましたが、地震時に地盤が液状化すると、開削トンネル等の地下構造物の浮き上がり現象が起こる可能性があります。この浮き上がり現象は、液状化した土砂と構造物の比重差により、構造物の下部に液状化した土砂が回り込むことによって生じることが原因として考えられます。そのため、構造物下部への液状化した土砂の回り込みを抑制できれば液状化による浮き上がり変位も大幅に減少できます。
この考えのもと、地下構造物周囲に非液状化層まで根入れした遮断壁を設置し、液状化した土砂の構造物の下への回り込みを抑制する工法が「遮断壁を利用した地震時液状化対策工法」です。この工法の原理のイメージを図 (a)(b)に示します。地震時には、構造物下部の液状化層が、構造物と遮断壁および遮断壁下端付近に存在する非液状化層で囲まれ、体積の変化が少ない閉鎖性空間が形成されます。この閉鎖性空間の体積は地震時にも変化しないため、内外の液状化圧力差による遮断壁の変形分の体積が構造物の浮上り体積となり、これを地下構造物幅で除すことにより浮上り量が求められることとなります。
図:遮断壁を利用した地震時影響化対策工法の効果原理概念
※地下構造物の浮き上がり防止方法の基本概念に関しては、清水建設株式会社が特許権を有しています。
阪神高速では、本工法を、開削工法で構築する地下構造物の、地震時液状化地盤中での浮き上がり防止のために用いる遮断壁の設計に適用しています。
本工法による設計上の要件は、以下のとおりです。