その他 |
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河川の陸上化やトンネル建設、地上を公園等にする
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1.概要
淀川左岸線正蓮寺川工区は、一級河川正蓮寺川内に位置する延長約2.4kmの工区です。この工区は、今ある河川を陸上化した後、開削工法で建設する道路トンネルのほか、河川・下水施設を高速道路に沿って地下に構築し、地上部分を公園等として環境整備を行う総合プロジェクトです。
施工手順は、まず、河川を陸上化するための基盤整備工事を行います。これは、河川を鋼管矢板により右岸側、左岸側に分割して締切りを行い、右岸側から工事に着手しました。右岸側については、セメント固化改良による原位置不溶化工法(汚染土壌がある場合に、その土壌を原位置から留めたまま、有害物質が溶出しないように性状を変更し、地盤改良する方法)により実施するものです。その後、左岸側については、右岸側の工事の課題を踏まえ、浚渫脱水固化土による埋め戻し工法を採用しました。これは、河川底質を真空吸引圧送方式で浚渫し、パイプラインを通じ処理施設へ送り、超高圧フィルタープレスを用いて脱水固化改良し、処理された脱水固化改良土は埋め戻し土として有効利用する工法です。以下に、この基盤整備工事について、紹介します。
2.正蓮寺川右岸側における基盤整備工事
(1)概要
河川の陸上化にあたっては、平均層厚4~6mにもなる堆積ヘドロ層の地盤改良が必要です。このため、セメント系固化材を用いて、固化改良しています。浅層改良時には、ヘドロの悪臭が発生することから河川の水を残したまま冠水により施工を行い、水換後表層改良工により、陸上化を行っています。
改良強度は、工事用車両の通行が可能な強度を確保するため、材令28日における一軸圧縮強度:0.5kgf/cm2以上を基準とし、設計上はばらつきを考慮し1.0kgf/cm2に見合うよう、原泥1m3あたりに固化材は138kg~144kg以上を配合しています。改良後の現位置の一軸圧縮強度試験の結果、平均2.5 kgf/cm2でした。
(2)固化改良における課題
その他のヘドロの固化改良において、(1)雨水のpH調整、(2)残土処理、(3)臭気対策の課題があり、次のような対応を行いました。
1)雨水のpH調整
へドロの固化材として使用したセメント系材料の物性の特徴から、改良後はアルカリ性になります。改良前の河川水のpHは約7~8程度でしたが、浅層改良後のpHは約10~12に上昇してしまいました。河川の放流水に対する大阪市の排出基準は、pHが6.5~8.5の範囲なので、浅層改良後の水抜き時にはpHを調整する必要があり、工事延長約2.3kmに対し5ヶ所のpH処理機(炭酸ガスによる中和装置)を設置し対応しました。
2)残土処理
改良へドロには、圧縮性が大きく、撹乱に対して鋭敏で強度低下が著しく、掘削攪拌後の改良ヘドロの流動化は激しいという特性があり、そのままでは残土処分が不可能でした。そこで、含水比を調整するため、高炉セメントを混合し強度を増加させたのち、残土搬出を行いました。
3)臭気対策
悪臭の発生源はヘドロ層で、温度に依存しており、高温であればある程臭気の発生量は大きく、その発生物質もヘドロのpHの影響を大きく受けます。固化改良前は、pHが中性域であったため臭気の主成分は硫化メチル系の混合臭であったのに対し、改良ヘドロの臭気主成分はアンモニアおよびトリメチルアミンに変わりました。この臭気対策として、酸化第一鉄を主成分とする消臭剤を鋤取時に散布することとしました。
3.正蓮寺川左岸側における基盤整備工事
左岸側の基盤整備工事では、右岸側の工事で発生した課題を踏まえ、高濃度吸引圧送方式によるポンプ浚渫船を使用して底質を浚渫し、脱水固化改良を行い、埋戻し土として有効活用しました。
脱水固化改良土の品質は、良質な埋め戻し材となるよう、含水比86%以下、室内コーン指数1200kN/㎡以上で減容率50%としました。この仕様を満足するよう、従来型の約5.7倍の濾過圧力を有する超高圧フィルタープレスを備えたプラント設備を構築しました。
現在、基盤整備工事は完了し開削トンネルを施工中で、平成25年春の完成に向けて、総力を挙げて取り組んでいます。
福島誉央,中川紀雄:淀川左岸線(1期)正蓮寺川工区基盤整備工事の施工報告,阪神高速道路第40 回技術研究発表会論文集,7 |