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建設技術
イメージ 走行安全性と耐久性を兼ね備えた「連続鉄筋コンクリート舗装」、排水性の向上とスリップを防止する「ポーラスコンクリート舗装」
その他

走行安全性と耐久性を兼ね備えた
「連続鉄筋コンクリート舗装」、
排水性の向上とスリップを防止する
「ポーラスコンクリート舗装」

建設場所
淀川左岸線

連続鉄筋コンクリート舗装

淀川左岸線(1期)は、重交通路線で高い大型車混入率が予想されており、その路面舗装は走りやすさとともに、長期にわたり十分な走行安全性や耐久性が要求されます。このトンネル区間である正蓮寺川トンネルの舗装の標準仕様は、照明設備を含めた建設時および更新時のLCCの検討を行った結果、コンクリート舗装が優位であったため、走行性と耐久性が期待できる連続コンクリート舗装を採用しました。

■連続鉄筋コンクリート舗装とは

連続鉄筋コンクリート舗装(CRCP:Continuously Reinforced Concrete Pavement)は、コンクリート版の横目地(施工目地を除く)を省いたコンクリート版と路盤で構成される舗装です。鉄筋比約0.6~0.7%の縦方向鉄筋を設置し(写真-1)、コンクリート版に生じる横ひび割れを鉄筋で分散させ、個々のひび割れ幅を耐久性に影響を及ぼさない程度に狭く分布させる構造で、舗装厚は、250㎜を採用しました(図-1)。また、横目地を設けないため(写真-2)、振動や騒音が軽減されるとともに、車両走行性の向上を図ることができます。

写真-1 連続鉄筋コンクリート舗装の配筋

写真-1 連続鉄筋コンクリート舗装の配筋

写真-2 連続鉄筋コンクリート舗装

写真-2 連続鉄筋コンクリート舗装

図-1 連続鉄筋コンクリート舗装の標準断面

図-1 連続鉄筋コンクリート舗装の標準断面

■急カーブ区間を考慮したコンクリートの配合

CRCPの施工では、機械化施工としてスリップフォーム工法(SFP 工法)を採用しました。

SFP 工法は、敷きならし、締固め、成型、表面仕上げ等の機能を兼備したスリップフォームペーバを使用し、型枠やレールを使用せずにコンクリートを連続的に打設する工法です(図-2)。人力施工に比べて作業工程が簡素化できること、施工能力が大きく工程短縮が図れるなどの特徴があります。

正蓮寺川トンネルでは、横断勾配が最大9%の急カーブを有しており、締固めがしやすく、自立が確保できるコンクリートを打設する必要と、スリップフォームペーパなど機械が横滑りをしない等の対策を施す必要がありました。そこで、急勾配におけるスリップフォーム工法に対応できるコンクリートの性状と施工方法を検討しました。コンクリートの粗骨材の最大寸法を40mmとし、その配合において、単位粗骨材容積(生コンクリートの単位体積当たりに粗骨材が占める割合)を通常の平均的な範囲である0.74に設定し、必要な強度やコンシステンシーが期待できる水セメント比(W/C)を設定しました。

さらに、スランプと空気量の運搬ロスを確認するため、本施工と同様の手順でプラントで練り混ぜて施工場所までアジテータ車で運搬して、スランプと空気量の経時変化を事前に確認しています(表-1)

図-2 スリップフォーム工法(SFP工法)の概要

図-2 スリップフォーム工法(SFP工法)の概要

表-1スランプおよび空気量の測定値および基準値

表-1スランプおよび空気量の測定値および基準値

■最後に

コンクリートフレッシュ性状を厳格に管理し施工機械を工夫することで、スリップフォーム工法による横断勾配が9%程度ある状態における、コンクリートの品質を確保し平坦性に優れた連続鉄筋コンクリート舗装が施工できました。

写真-3 施工状況

写真-3 施工状況

ポ―ラスコンクリート

正蓮寺川トンネルは、入口付近は急勾配で、さらにその先は急なカーブの線形です。トンネル内に流入する雨水や走行車両のタイヤからの引き水により、カーブ区間の路面の滞水を排除し、スリップを防止するために、ポ―ラスコンクリート舗装(POC舗装)を採用しました。

POC舗装は、これまで我が国では国道や高速道路の料金所等に実績がありましたが、大型車が多い重交通路線で、12,000m2 を超える大規模な施工は、世界でも初めてです。このPOC舗装は、車道用としての十分な強度と耐久性に加えて、路面のすべり抵抗性も十分な性能が要求されました。そこで、強度、耐久性、すべり抵抗の要求される性能を検証の上、詳細な配合検討を行い、仕様を確定し施工性確認試験を踏まえて、実施工を行いました。

■ポ―ラスコンクリートとは

POC舗装の断面は、図-3に示すようにPOC層と普通コンクリート(NC)層の複合構造を採用しており、その層厚はコンクリート舗装厚としてt=250mmで、POC層t=75mm、NC層t=175mmで構成されています。なお、POC層内には雨水が浸透することから、通常のコンクリート舗装に使われる鉄筋、鉄網、ダウエルバー等は設けず、目地部での荷重伝達は下層コンクリート版であるNC舗装にて受け持たせる構造を採用しています。

図-3 POC舗装標準断面と表面の状態

図-3 POC舗装標準断面と表面の状態

■詳細な配合検討

配合検討に際しては、POCの大半を占める粗骨材が耐久性や路面のすべり抵抗性に影響を及ぼします。そこで、詳細な配合検討を行い、骨材選定試験を実施しました。試験項目とその要求性能は表-2に示すとおりです。高速道路上の供用後を想定したすべり抵抗性の確認を目的に、回転ラベリング試験(写真-4)、ASTM摩耗試験(写真-5)を実施しました。要求性能として、曲げ強度は材齢28日で4.5N/mm2、カンタブロ試験は損失率20%以下、定水位透水試験は透水係数0.01cm/s以上、乾燥収縮試験は6か月で800μ以下を目安に設定しました。

検討結果により、ロサンゼルスすり減り試験のすり減り減量が11%ですり減り抵抗性が高く、モース硬度は5.5と硬度が高くすり減り抵抗が高い道路用砕石として実績のある和歌山県産硬質砂岩の6号砕石(最大粒径;13mm)を採用しました。また、水バインダー比(バインダー:セメントと混和剤の和)W/Bは25%、空隙率は15%としました。

表-2 試験項目とその方法

表-2 試験項目とその方法
写真-4 回転ラベリング試験機

写真-4 回転ラベリング試験機

写真-5 ASTM摩耗試験概要

写真-5 ASTM摩耗試験概要

■本施工

NC舗装施工後のPOC舗装の施工は、次の手順で行いました。

ショットブラストによるNC舗装の表面処理(写真-6)後、無収縮モルタルを塗布しました(写真-7)。

生コンクリートは、アジテータトラックで運搬しました。POCの敷均し・締固め、締固め能力に優れた高締固め型アスファルトフィニッシャ(TTV方式;ダブルタンパバイブレーション併用方式)を使用しました(写真-8)。アスファルトフィニッシャへの材料供給は縦取り機を使用しました。

POC舗設後(写真-9)、初期養生として速やかにビニールシート+養生マット+ブルーシートを敷設しました。POC舗装目地はカッタ目地とし、POC舗設後約24時間後にカッタ切断を行いました。

写真-6 普通コンクリート上面のショットブラスト

写真-6 普通コンクリート上面のショットブラスト

写真-7 無収縮モルタルの塗布

写真-7 無収縮モルタルの塗布

写真-8 アスファルトフィニッシャによる敷均

写真-8 アスファルトフィニッシャによる敷均

写真-9 舗設完了時の表面の状況

写真-9 舗設完了時の表面の状況

■最後に

都市高速での初めてのPOC舗装の施工になりましたが、粗骨材の管理を強化することにより、安定したPOCを現場に供給することができました。また、数回に及ぶ試験施工の結果を踏まえて作成した作業標準により、スムーズに舗設を完了することができました(写真-10)。

写真-10 完成後のPOC舗装

写真-10 完成後のPOC舗装