31号神戸山手線は、3号神戸線と7号北神戸線を南北に結ぶ自動車専用道路である。大規模住宅団地や産業団地の開発が進む神戸市西部エリアと、神戸都心とのアクセスを強化し、慢性的な渋滞が発生している一般道路の混雑緩和をはかるために計画され、最終的には湾岸線(大阪湾岸道路西伸部)に接続する計画もある中で整備が進められている。
今回紹介するのは、神戸山手線建設の一環として行われた、神戸高速鉄道との交差部における工事である。
新しい路線を建設する際に密集市街地を通らざるを得ないのは、阪神高速道路の宿命とも言うべきものだが、この神戸山手線南伸部は北から神戸高速鉄道、神戸市営地下鉄西神・山手線、JR山陽本線の3つの鉄道と交差し、将来的には湾岸線へ接続する部分も含めると4つ目となる神戸市営地下鉄海岸線とも交差する。なかでも神戸高速鉄道交差部は、地下に設けられた鉄道函体を掘り出して仮受け杭で支え、さらに函体の下を掘削してトンネルをつくるという、極めて難易度の高い工事であった。
なお、交差部における仮受けの施工は鉄道の運行管理と密接に関連することから、神戸高速鉄道株式会社に工事を委託している。
このプロジェクトの工法検討・設計・施工の段階で携わった建設事業本部建設企画課課長の藤井康男と、神戸高速鉄道株式会社に出向して工事に携わった阪神高速技術工事部の大池岳人に話を聞いた。
特に、平成22(2010)年12月18日に開通した南伸部1.8kmの区間はすべてトンネルで、3つの鉄道営業線の上や下をかいくぐるようにして道路がつくられています。そのうちで工事が最も複雑で規模が大きかったのが、神戸高速鉄道との交差部です。
営業中の地下鉄トンネルの真下に新たなトンネルをつくって道路を通すのですが、その位置関係と施工手順が複雑で図面だけでは理解するのも難しく、現場で迷子になりそうなくらい(笑)の大規模な工事だったわけです。
地下にある鉄道函体を掘り出し、その直下を仮受け杭で支え、さらに掘る。そして出来た空間に道路函体を構築する工事です。
仮受けする函体は総重量20万kNと非常に重く、しかも仮受けしなくてはならない区間が120mと長かったために、一般的な工事と比べ数倍の工期を要し、仮受け期間は6年にも及びました。
これだけの規模の工事は他所では見られず、国内最大の仮受け工事でした。
プロジェクトを安全かつ着実に推進するため、受託者である神戸高速鉄道株式会社さんが平成9(1997)年に委員会を立ち上げ、学識経験者、神戸市、鉄道事業者、阪神高速道路株式会社、工事請負者などで構成されたメンバーで議論が重ねられてきました。神戸高速鉄道では一日に400本の電車が走りますので、その運行に支障をきたすことのないよう、仮受け杭の仕様や施工方法の決定に至っては細心の注意が必要でした。