保全管理課が事前調整に走り回っている間、保全工事課でも工事のための準備が着々と進められている。なかでも重要なのが工事内容を決定するための事前調査と施工計画だ。
日常的な点検によってすでにデータ化してある補修箇所をもう一度洗い直す作業、それが事前調査です。昼夜連続で集中的に工事が出来る機会というのはそうそうないですから、有効な工事を数多く行いたい。そのために再度点検を行って、いま最も工事が必要な場所はどこで、どのような補修が必要かを精査します。日数も限られているので、優先順位をはっきりさせることが重要になってきます。
そうして過去のデータに直前の点検で得られたデータを加えたものをベースに、施工計画を練っていきます。
そうですね。貴重な機会ですので一時も無駄にしたくないという気持ちはあります。
舗装の打替え、伸縮継手の補修、案内標識の取り替え、照明柱の取り替え、出口の逆走対策などです。舗装補修では、降雨時の排水がスムーズで走行車両のタイヤと路面との摩擦音を軽減する高機能舗装に取り替えます。伸縮継手については、段差が生じにくい新しいタイプのものに取り替えるなどの作業を行います。
多くの工事担当事業者が現場に入りますので、それぞれの作業がスムーズに進むように段取りを組むことがとても重要です。いつ、どのような作業を行うかという工程表の作成には非常に神経を遣います。天候の変化などにも対応できるよう柔軟性はもたせてあるのですが、工期のうちのほぼ半分が雨天というアクシデントに見舞われたこともあり、さすがにどう調整すれば良いのかと途方に暮れる思いでした。保全工事課にとって一番の天敵は雨と言ってもいいくらいです(笑)。
岡上 政史
綿密に練られた工程
損傷している舗装を打ち替え、走行性を改善。
広範囲・大規模な補修により全体的な品質が向上、ポットホール(穴ぼこ)も発生しにくくなる。その結果、緊急補修工事の回数が削減される。交通事故が多く発生しているカーブ区間においては、滑り止め舗装を実施。
重機による既設舗装の撤去状況(湾岸線)
既設舗装撤去後の状況(湾岸線)
新設舗装の施工状況(湾岸線)
損傷がひどい伸縮継手を段差が生じにくい新しいタイプのものに取り替え。
路面の平坦性を確保し、快適な走行性や沿道環境の改善を図る。
橋の継ぎ目(伸縮継手)の取替(湾岸線)
照明装置を設置している従来の標識を、超高輝度反射シートを採用した標識板に取り替え。
夜間の視認性が向上するとともに、従来行っていた照明装置の保守点検や電球の交換が不要となり車線規制工事を削減。
環状線
池田線
神戸線
道路照明をLEDに取り替え、従来照明より長寿命・省エネルギー化を図る。
電球の交換頻度が少なくなるため、車線規制工事が削減される。またLEDは白色のため、視認性も向上。さらに剛性の高い照明柱への取り替えにより、照明柱の耐震性が向上。
工事前(池田線)
工事後(照明柱の取り替えとLED化)(池田線)
近年、増加傾向にある本線・出入口からの逆走及び誤進入の防止策として、以下の対策を実施。
(湾岸線)
逆走防止用矢印
合流部の逆走を防止するため、大型矢印の路面標示とポストコーンを設置。
(湾岸線)
出口部誤進入等対策
高速道路出口部では、車両の逆走だけでなく、歩行者等の誤進入も発生しているため、路面に「高速出口」等の表示ととともに、高欄部に高輝度反射シートを設置、夜間帯における誤進入等の防止を図る。
フレッシュアップ工事では走行性や沿道環境の改善を図るだけでなく、工事そのものによる振動や騒音、臭気が周辺の迷惑とならないよう、出来る限りの対策を行っている。また今後の向上をめざして試験的な工事も実施している。湾岸線で行った試験的な工事を紹介しよう。
既設の舗装をはがして新しく舗装し直す際に、これまではブレーカーやバックホウなどを用いて鋼床版から剥がしていた。
しかし、その際の騒音が相当大きなものになるため、湾岸線のフレッシュアップ工事の一部で試験的にIH式舗装撤去を採用した。これはIHクッキングヒーターの原理を利用して鋼床版を加熱、グースアスファルトと鋼床版間の接着層を剥離させるというもの。接着層を剥離させてから剥がすので、従来工法に比べると約10デシベル騒音を低減できる。施工範囲が狭いとのことで補助的な工法になりそうだが、徐々に使われる機会が増えることが想定される。
グースアスファルトを舗装する際に出る臭気。独特のにおいが風に乗って伝わってくるという苦情が周辺住民から寄せられたことから、アスファルト消臭剤を試験導入。残り香が「せっけんの臭い」!?ということらしい。その後行われたフレッシュアップ工事では、臭気に関する苦情は今のところ寄せられていない。