兵庫県南部地震の調査と分析によって、「構造物は壊れる」ことを前提に、「点検・補修が容易」な、「耐震性の高い橋脚」をつくることが目標として設定された。その具体的なかたちとして提案されたのが鋼管集成橋脚だったのである。
構造としては鋼管4本を組み合わせ、横つなぎ材によって接合し一本の柱とするユニット構造です。
この構造の一番の特徴は、縦の部材(鋼管)と横の部材(横つなぎ材)それぞれに、別々の機能を受け持たせているところにあります。
どういうことかと言うと、従来の橋脚が、車や桁の荷重とともに地震の揺れも引き受けなくてはならなかったのに対し、この新しい橋脚は、鋼管部分が車や桁の荷重を支え、横つなぎ材が地震の揺れを吸収します。そのため仮に地震が起こっても、基礎構造は大きな損傷を受けることなく、高速道路の高架橋を走行する車両を守ることができるのです。
鋼管集成橋脚の構造
横つなぎ材の真ん中にあるのが「せん断パネル」です。
このパネルは普通の鋼板よりも柔らかめで壊れやすく、地震が起こると平行四辺形のように変形して地震エネルギーを吸収します。つまり構造物全体の中で、ここは“あえて損傷させる部分”なのです。このせん断パネルが地震エネルギーを引き受けて損傷することによって、他の部分はほぼ無損傷で済み、車両通行止めなどの機能障害のリスクを減らすことができます。
せん断パネル
そうですね。被災経験の教訓から得たものです。構造物が壊れるものであるのなら、いっそ壊れてもらおうと。
橋梁を一体的に捉え、損傷を制御する手法を「損傷制御設計」と呼んでいますが、阪神高速では湾岸線の港大橋や天保山大橋の耐震補強に採用されています。今回の鋼管集成橋脚はその延長線上にあるものです。