形状・素材・色彩が異なる橋梁が立体的に交差する中で、連続性や統一感を持たせるデザインを考え、広い範囲にわたって施工したのは、今回の三宝ジャンクションが初めてのケースだ。それだけに手探りの部分も多かったが、設計・現場を担う人々の情熱がどのような困難も乗り越えさせてくれた、と茂呂は言う。
それは本当にそう思います。コンセプトを決める段階から設計・現場の人間でプロジェクトチームを組んでいますから、どうせやるならここまでやった方が良いというのが、みんなわかってくるんですよ。
それにしても壁高欄をくの字に折り曲げろとか、円柱と曲線を持った梁を組み合わせた橋脚をつくれとか、今回は職人泣かせな構造物を数多く提案しました。それに対して受注者の皆さんも真剣かつ積極的に取り組んでくれたので、結果的に良い構造物が出来たと思っています。現場では異なる意見がぶつかりあい、白熱したやりとりが交わされる場面も多々ありましたが、良いものをつくるという共通の目標あってのことなので、わだかまりは全く残りません。そこがものづくりの醍醐味だと思います。
そうなんですよ。桁や橋脚に排水管を取り付けるのに、出来るだけ目立たない色にしたいと言ったら、現場の主任さんが「良いのがあるよ」と見本を持ってきてくれて、わざわざクレーンで吊って橋脚との色のバランスを確かめさせてくれたことがありました。また別の日には、三宝ジャンクションの工事現場で旧護岸の石積みが大量に見つかったのを、敷地内で流用できないかという話になり、道路外の平地部分を石畳にすることが急遽決まったのですが、今では数少ない石工さんを手配して綺麗な石畳をつくってくれました。
排水管をクレーンで吊って色バランスを確認
旧護岸でみつかった石積みを再利用した道路外の平地部分
良いものをつくるという共通の目標に向かって、みんなが心を一つにしていたので、現場には日々ディスカッションの声が響いて活気がありました。私は幸せなことに平成22年から25年の完成までずっとこの現場に関わることができたのですが、毎日がものすごく充実していて、あっという間に月日が経ったという感じです。
余談ですが開通の日の朝、嬉しくて写真を撮りに行ったんです。そうしたら私が面倒なことばかりお願いしていた現場の主任さんもやはりカメラを持って来ておられました。数時間後、二人で「いい写真が撮れた!」と見せ合ったのも良い思い出です。