Hi-TeLusのプロトタイプには、限定的ではあるが、より多くの人が使うであろうことが想定される機能がいくつか搭載された(コラム参照)。例えば「ファイル共有」は、大容量のドキュメントファイルをクラウド上に保存し、受発注者間でやり取りすることができる機能。工事請負契約において作成される多種多様で大量の関係書類の削減に直接つながる必須の機能だ。
試行導入が始まってみると、予期していなかった問題がいくつか表面化した。例えばHi-TeLusでは、IDとパスワードが流出した場合でもセキュリティを確保するため、ワンタイムパスワードを使った二段階認証を行なう。だが現場で作業にあたる工事会社のスタッフが持つ端末は、スマートフォンからガラケーまで多種多様。認証を受けられず、ログインできないケースが散見された。
仕組み的にも、セキュリティ上も大きな問題はないのですが、使う人によってうまくいかないケースが、どうしても生じます。専用アプリを使わずに認証を受ける方法をメーカーとも調整して、何とか問題解決できました。
中には「ガラホ」と呼ばれる進化型ケータイを使うスタッフの方もいて、対応が難しい。順次、改善していく予定です。(平野敏彦)
試行導入が始まってすぐ、工事監督部署で工程管理や品質管理の業務にあたる平野翔也のもとにも、「実際の工事で使ってみてほしい」との打診があった。
だが、いきなり大規模な工事で使うにはリスクもある。そこで塗装塗り替え工事など、比較的小規模な工事でテストすることにした。
現場スタッフの方はベテランの方が多く、スマホやPCの操作に精通していないこともあって、やはりログインのところでつまずく方が何人かおられました。
でもセキュリティを考えれば、そこは乗り越えてもらうしかありません。年齢もキャリアも違うさまざまな人たちに、容易に使っていただけるシステムを作ることがいかに難しいことかを、肌で感じました。(平野翔也)
ただ一度使い始めると「便利だね」「ラクだね」という声が、あちらこちらから聞こえてきた。試行導入されたプロトタイプは、現場で徐々に受け入れられ始めた。
例えばこれまでは、日々の施工完了検査に必要な紙の書類を提出していただくために、受注者の方に当社の事務所まで足を運んでもらわなければなりませんでした。でも「Hi-TeLus」の「共有フォルダ」を使えば、紙の書類をつくる手間が省けて、直接出向く必要がなくなります。
また紙の文書だと、記入漏れや書き間違いなどのケアレスミスがあった場合、再印刷も含め、1から全部修正しなくてはなりません。そんな時「Hi-TeLus」だと、電子ファイルのデータを修正し、共有フォルダにドラッグ&ドロップするだけで済んでしまいます。(平野翔也)
書類のやり取りをスピードアップし、業務効率を格段に向上させる「Hi-TeLus」。一度使い始めると、手放せないツール。
時間の経過とともに、そのことを多くの人が認識するようになった。
「Hi-TeLus」導入によってもたらされる影響は、それだけにとどまらない。
業務の負担が軽減したことで余裕が生まれ、技術的な議論や検討作業に、より多くの時間を割くことができるようになった。
高速道路の工事は、工期内に終えることも大切な要素の1つです。それが見えない圧力となっていつも時間に追われ、よりベターな選択肢が目の前にあっても議論を深めることができず、途中でしかたなく結論を求められる場面が少なからずありました。
でも「Hi-TeLus」を使うようになってからは、自分で納得がいくまで技術的な議論に時間を費やすことができるようになりました。建設業の日常が、一歩ずつ、でも着実に変わりつつあることを実感します。(平野翔也)
「Hi-TeLus」のコンセプトの通り、真にめざすべきところは、業務を効率化することによって受発注者が質の高いコミュニケーションを実現し、それによって技術的な検討や議論ができる環境を創出することだ。
その理想が現実のものになる日は、そう遠いことではない。