どんなに高い理想を掲げ、理論的な裏付けを用意しても、それを実際の製品としてカタチにするのはメーカーです。いかにメーカーと協同するか、さらには開発の思いを共感できるかが、とても大事なことだと思っています。公共のサービスを提供する阪神高速にとって、利用されるお客さまの安全は最優先。トンネル防災をさらに一段高いレベルに押し上げるためにも、この技術を「絶対に実現させたい」という思いをありのままに伝えました。
いったん供用が開始されると、次回の設備更新まで5年から10年の間隔を要するので、新技術が今回間に合わなければ従来の機能のまま長年運用しなければなりません。「やるからには、今のタイミングしかない」という思いはもっていました。
難しい質問ですね(笑)。特許まで出願した技術開発ですから、嬉しくないといえばウソになりますが、私の中では炎強調カメラがゴールだとは思っていません。将来の話になりますが、私たちはさらに高い理想像も可能ではないかと考えています。炎強調カメラは、その理想像を実現するためのほんの「入口」の技術開発にしか過ぎません。喜びや達成感も1割、2割というのが、正直なところです。
技術開発を完了した炎強調システムは、過去に前例のない先進的技術であることから、知的財産としての価値を担保するため、特許取得の出願申請が行なわれた。
特許出願する時に調査した限りにおいて、全国の高速道路で導入された事例は、見つかりませんでした。世界的にみてどうかというと、正式な調査を行っていないので確かなことはいえませんが、個人的に調べた限りにおいては、やはり過去に前例はありません。
技術開発が終了すると、実際のトンネルへの設置・導入にむけた検討が始まった。現場への設置工事を担当したのは、当時、堺建設部に配属されたばかりの井藤貴文。阪神高速では初のAA等級トンネル「伊丹トンネル」の防災カメラの更新工事を手がけた経験から、大和川線の防災カメラの設置工事を担当した。
堺建設部に配属されるまでは施設保全の部署にいて、
多くの更新工事を担当しました。
中でも防災カメラとは関わりが深く、
炎強調システムは、従来の防災カメラと外見は似たようなカタチをしていて、設置する間隔も同様なのですが、機能を実際に使用する防災指令員に対して説明し、より有効に使っていただけるように調整を進めた点が最も注力した部分だと思います。
炎強調カメラでは、交通管制センターの防災指令員がフィルターのON/OFFを遠隔操作で切り替える機構を備えています。そのため設置・導入にあたっては、何度か交通管制センターに足を運び、防災指令員の要望を聞いて、どのような状況で、どのように作動させるのか、常時ONの状態にするのか、ONとOFFを切り替えられるようにするかなど、細部を話し合って確認した上で工事にあたりました。