土木学会技術賞のほか、米国のフランツ・イーデルマン賞、関西道路研究会優秀作品賞など数々の受賞歴をもつ阪神高速の交通管制システム。特に土木学会の技術賞は、これまで構造物に対して与えられることが通例であっただけに、大きな話題を呼んだ。いまも阪神高速で新しく開発される交通管制システムは、様々な分野からの注目を集めている。
ITS先進国である日本において、阪神高速に対する期待はますます大きくなり、同時にその力量も厳しく問われていくことになりそうだ。
カーナビゲーションシステムと連携した道路交通情報提供サービスや、サービスエリアなどにおける地域・観光情報、災害時の道路状況の情報など、我々が提供していくべき情報は、ますます高度化し多様化していくと思います。これまではどちらかというと、道路上の情報だけを集めてきましたが、これからは様々な分野とのネットワーク構築が課題になると思っています。
ITSスポットを活用した情報提供に関する社会実験
2009年に導入された【前方状況情報提供システム】
よりよい環境づくりや高齢者が安心して暮らせる街づくりなどに、交通管制システムが積極的に貢献していく時代が、もうすぐそこまで来ていると思います。阪神高速では今後もみなさんのお役に立てるよう、我々のシステムを使ってできることを、柔軟かつ大胆に発想していきたいと思います。
阪神高速の管制システムが、いろいろな技術の粋を集めた先進的なシステムであることは間違いがありません。けれどそれは誰よりも高い技術を持ちたくてそうなったのではなく、ドライバーなどのすべてのお客さまに満足していただけるような環境づくりを目指した結果、そうなったということを忘れてはいけないと思います。技術というものは、何も起こらない平和な日々を実現するためにあるもので、技術者の自己満足のためにあるのではないのですから。きっと私達の先輩もそう思って頑張ってきたのに違いないと、私自身は思っています。
交通管制センターには多くの人々が見学に訪れます。平成15年にリニューアルしてから8年目になるのに、いまだに見学者が絶えないということは、それだけ進んだシステムをつくり上げていたということで、私達の誇りでもあります。それだけに、次にリニューアルする時にも、先輩諸氏に「なんだ、こんなものか」と言われないようにしなくては、と身の引き締まる思いがしますね。そういう、人から人へと受け継がれる技術者魂とでも呼ぶべきものが、阪神高速の財産だと思います。