設計、施工それぞれご担当の立場から、「高架道路上に新たに作ることの困難」を解決されていった一番のポイントは何だとお考えでしょうか。
設計としては、高架道路上という計画地の不確定要素に対してできる限り対応しやすい計画にしておくことかと思っています。それでなくても現場と設計条件が違うことが往々にしてありますので、周囲の構造物との条件が異なっても根本となる構造部分は影響を受けないようにしておくこと、ある意味、柔軟な対応策がどれぐらい作れるかが重要かと考えます。
施工の視点では、他工事との調整がポイントかと思います。日単位で工程調整を行うことでトラブルなく工事を完工することができました。今後も気を付けていきたいのは、設計と現場で差異があった場合に、多くの選択肢を持っておくことです。できる限り設計意図を具現化するために、現場調査は念入りに行いたいと思います。
芝生と壁面緑化に囲まれたオープンスペースを含む157mの「えんがわ」が特徴的。内外装材は杉板で、木のぬくもりを感じられる穏やかな空間。
テント屋根とウッドデッキのある開放的な空間。海辺のさわやかな風を感じられる。内部には芦屋浜ゆかりのクロマツにちなみ、松の木を用いた木ルーバーを設置。
約12mのゲートがお客さまをお迎え。ゲートからアプローチ天井を杉板、建屋内部にシナ合板を使用し、木質系仕上げ材を連続させた温かみとやすらぎを感じさせる空間。植栽帯に囲まれた広場も。
これからの阪神高速の建築について、
お聞かせください。
今回はPAという阪神高速においては最もお客さまと接点のある建物についてお伝えしましたが、当社には他にも料金所や、トンネル内の空気を浄化・排出するための換気所、高速道路上に電気を送るための受電所、電気室といった高速道路機能に欠かせない建築物があります。また、我々社員やグループ会社の仲間が働く事務所や基地も建築物です。そういう意味で建築職は間接的に高速道路を支えている存在ではないかと思います。現在も新しいPAの新設を行っておりますし、「先進の道路サービスへ」を意識して、さらに建設や維持管理を高度化させていくことが使命であり、個人的にも常にアンテナを張り、先進のサービスとしてどのようなものをご提供できるのか、考えていきたいと思っています。
高速道路を機能させるためには建築施設は必要不可欠であり、建築は施設を利用する人すべてに影響を与えるものです。そのため施設利用者すべてがお客さまと捉えることができます。どんな時であってもすべての利用者に安全・安心・快適なサービスを提供できるよう、常日頃からお客さまの目線に立ち、計画から維持管理までのトータルマネジメントを行うべきであり、そのように努めていきたいと思います。
最後に、業界を目指している若い人たちへのメッセージをお願いします。
建築業界は学問的にも芸術的な分野から環境、構造といったテクニカルな分野まで裾野が広いところがあるので、就職先も比較的自由度が高いと感じています。それがメリットでもあり、デメリットになる場合もありますが、就職活動の時期は色々な企業に幅広く触れられる唯一の時間だと思いますので、いろいろな企業をぜひ知ってもらえればと思います。
阪神高速は建築という視点から見ると、独自性が強い会社でもあり、関わる建築物も事務所のように普通のものもあれば、パーキングエリアや料金所といった特殊なものもあり、計画、設計、施工、積算、維持管理と長いフェーズでさまざまな建築物と関わり合っていきます。そこがおもしろいところでもあります。また、お客さまをはじめ、社員といった多くの人と関係を構築して初めて建物が機能していきます。
そのような中で一緒にお仕事をするご縁があれば、ぜひ当社でチャレンジしていただきたいと思います。
建築との関わり方次第で職業は全く変わりますので、就職活動では、建築を通じて自分が何を成したいのかを意識していただければと思います。例えばインフラ関係で社会の縁の下の力持ちになりたい、あるいは建築そのもの、モノづくりをしたい、また構造を考えるのが好きだなど、どんどん掘り下げていただけたら。
阪神高速の建築は計画から維持管理までを行っておりますが、ジョブローテーションにより十数年でほとんどの部署を経験することになります。建築に係るほぼすべてに関わることができる会社はそう多くないかと思います。また、それぞれの部署で他職種との交流があるので、部門間のコミュニケーションが非常に重要です。広い視野を持ち、同じ目標に向かって共に歩めることを楽しみにしています。