平成15(2003)年8月、補強工事は無事完成。現在も点検、計測は続けられている。
また、新しく建設される橋にもこの方法がしばしば用いられるようになり、橋梁のコンテストなどでよく見かけられるようになったそうだ。世界で初めての下弦ケーブルを使った橋梁の補修は、結果として橋梁建設の分野に新たなステージを切り開いたと言える。
私は長く建設畑にいて、喜連瓜破の橋梁の補修についても最初は傍観者の立場でした。それでも自分なりに「こうすればいいのにな」と思っていたのが下弦ケーブル案だったのです。そこに「君、やってくれ」とお呼びがかかった。もうこれは運命だな、と思いました。あの時の昂揚感、そして実際に仕事に関わることができたのは、とても幸せなことだったと思います。
私は検討委員会の一員だった先生が、腰に持病を抱えておられるにもかかわらず、現場を見たいとおっしゃって、それを実行されたことが忘れられません。
喜連瓜破橋の内部は、空洞になっています。場所によっては這わなくては進めないほど狭い箇所もあり、鳩のフンなども落ちています。
それでも「机上の論理ではダメなのです。現場を見なくてはね」とおっしゃる先生の学者魂に打たれました。
何にでも好奇心をもって取り組んでほしいです。君の「こうしたい」という思いが宝物なのです。そして、やり遂げるためにはpatient―我慢強く、諦めないこと―が何より大事。諦めなければ道は開ける、私はそう信じています。
維持管理という仕事は一見地味ですが、ものすごく力量が求められる仕事です。
そして、今だけでなく未来を見据えて考える度量も求められます。阪神高速の歴史をつくってきた先輩達は、想定外の劣化現象に遭遇しても、決して怯むことなく様々な対応策を編み出してきました。そんな阪神高速スピリットを、次代を担う皆さんにもぜひ大切にしていただきたいと思います。