整備してきたPAはすべて高架道路上にあることから、地面に直接杭や基礎を造る建物とは荷重条件などが大きく異なる。さらに料金所跡地に建てるもので、当初から建物を整備するように設定された場所ではなく、スペースは限られている。そこから見えてくる課題とは。
高架道路上に建築物を建てる場合、地面から建てる場合と異なる、さまざまな制約があるのですね。
本来は建てるものに見合った基礎を地面に造ってから建てていくわけですが、地面にはすでに土木構造物である道路があり、その道路の床版上に新たに建物を構築するので、荷重条件に制約がある中で建てることになります。元々、PAを建設するための荷重を想定した構造となってはいないわけですから、許容される建物重量には制約があるのです。
一方、当社のPAは災害時に待避場所となることも想定しており、当社としてはPAには通常の建築基準法レベルより耐震安全性を割り増しした構造目標値を設定していることから、構造のボリュームも大きくなる傾向にあります。建物重量もそれなりにかさむこととなるのです。
また建物に供給する電気や水道といったインフラも通常であれば地上で供給がしやすいのですが、高架道路上なのでどこから持ってくるか、そのルートも建物の計画と合わせて検討が必要になります。
さらに高架道路上ですから、ビルの7階、8階くらいの高さに建てることになり、地上より風荷重を強く受けることを考慮しなければなりません。建物としては平屋ですが、地上8階にある建築物と同様の強度が必要です。
また施工時にはお客さまが走行される横での施工となるので、工事中の資材搬入や安全管理も通常の建築工事とは異なることとなります。
PAには駐車台数に応じた数のトイレ、休憩スペース、自動販売機、道路情報提供コーナー、喫煙室などお客さまの利用スペースに加えて、より快適な空間のため常時の空調、受電、通信などの設備、非常時の防災用備蓄倉庫、自家発電設備など、実に多くの機能が求められます。
泉大津大型専用PA当社では、ビジネス、観光など目的も多様で、高齢者からお子さままで幅広い年齢層、また障がいをお持ちの方、外国の方など、いろいろな方々が安心してご利用しやすいよう、どのPAも同水準で高い機能を持たせるよう仕様を統一化し、整備しています。例えば、すべてのトイレのブース内にベビーチェアを設置したり、お子さまがうっかり鍵を開けないよう上下二重に鍵を設置するなど、きめ細かく配慮しています。
本事業で整備しているPAは、料金所跡地であるためそもそも空間に限りがあります。その中で、警察との協議などで駐車スペース、車路や歩道の安全性を決めていくことから、PAの敷地はさらに限られてきます。駐車場の計画台数からトイレ数など建物規模が決まるので、限られたスペースに当社の統一化された仕様に基づいて、さまざまな機能を設定していかなければなりません。スペースと求められる多くの機能との調整、荷重条件の調整、主にこの二つが大きな課題でした。
この事業を担当するにあたっての思いをお聞かせください。
私は尼崎と南芦屋浜PAの施工を担当し、次に高石と泉大津、中島PA(仮称)の三つの設計に携わることとなりました。2カ所の施工を担当した経験を踏まえて設計にできる限り反映していきたいと考えました。
この事業だけでなく、常に言えることですが、電気や設備など関わるそれぞれの専門業者さんも含めて、全員との情報共有が非常に重要です。各現場でも状況が異なるので、その都度新しい情報を把握し、共有することを大切にしています。
私は泉大津大型専用PAの施工担当から携わっています。供用路線で新設に携わる機会はまずないと思っていたので、今回の件で建築職として大きなチャンスが到来したという期待感と、限られた空間でいかにお客さまへ想像以上に満足いただけるかという不安感も正直感じていました。
設計とは違う視点でも施工を捉える必要がありますし、先輩方の背中を見ながら、また先輩方から教えていただいたノウハウを活かして、次の中島PA(仮称)の施工も進めていきたいと思っています。