新たに構築した事故データベースを使った詳細な分析により、ドライバーの属性ごとの事故傾向が確認できた。これまではドライバーがどのような特徴を持っているかに関係なく一律の交通安全を呼びかけていたが、兒玉たちの分析により、その人にとって最適な情報をピンポイントで伝えるための基礎データが整ったのである。
これにより、漠然としがちなため自分事化されにくい交通安全情報が、納得感や共感が得られる「個別で」「具体的な」情報に生まれ変わったのである。
阪神高速事故統計(平成17年4月~平成20年12月(3年9ヶ月))より
じつはそこが一番悩んだところでして・・・。こういうWEBサイトは見て、使ってもらわないと意味がないでしょう?あまり堅いものだと興味を持ってもらえないのではないかと思い、ゲーム形式などのエンターテイメント性の高いものも考えたんです。ちょうどその頃、他の高速道路会社でも趣向を凝らした交通安全施策が展開されていて、自分たちはどういう方向性をめざすのかすごく悩みました。
しかし、多額の広報費用を投入してのキャンペーンは一過性ブームに終わる危険性がありますし、エンターテイメント性の高いコンテンツは流行り廃りの潮流も早いものです。交通安全教育は普遍的なものだけに、時流に左右されるものであってはならない。
だからと言って「退屈でも良い」と考えたわけではありません。「阪高SAFETYナビ」を実際に使っていただければわかりますが、イラストや映像を多用して分かりやすく、そして具体的で興味深い内容になっています。
設問に答えたり、実際の利用ルートでの安全運転のシミュレーションをするうちに、自身に必要な具体的な交通安全情報や自身の安全運転レベルがわかったり、利用ルートでの安全運転するポイントを実際に考えたりといった具合に、コミュニケーション的なキャッチボールを通じて、お客さま自身にとって必要な、走行中に注意すべきポイントや運転ノウハウが自然と身に付き、知らず知らずのうちに安全運転への意識が高まっていただけるように考えて構築しています。
設問は阪神高速道路で事故につながりやすい30場面で構成。アドバイスも「カーブでは直線の○倍事故が発生している」といった具体的な数値も提示することで、その危険程度を認識しやすくなるように工夫している。また、取り組み後に提示される診断書では、安全運転レベルの判定だけでなく、自身の特性にあった安全運転のポイントも充実した内容になっている。
それが、いざリリースしてみると、危惧していたとおり、なかなか利用者が増えない状況が続きました。 コンテンツ自体にも改善の必要性はありましたが、最も大きな問題は、この類の交通安全コンテンツに対する興味・関心の低さでした。
そこで、平成24年度にこれまでの取り組みデータを分析して、診断プログラムとしての信頼性・妥当性を統計的に立証し、お客さまの声を踏まえた改修を行いました。さらに、スマホ版や企業研修に最適化した「団体用」をリリースするなど、幅広い利用環境を整えてきました。また、平成25年度には、比較的関心の高い層をターゲットに集中的なWEBプロモーションを実施し、露出を高めただけでなく、潜在的なニーズが非常に高いことが確認できました。 このように、段階的にコンテンツの評価を高めながら着実に展開の幅を拡げてきた甲斐あって、現在は多くの方にご利用いただけるようになりました。
おかげさまで平成26年2月に実施したアンケートでは、「阪高SAFETYナビ」に取り組んだ人のうち、5割以上の人から「自分の注意するポイントが分かった」「自分の安全運転能力が把握できた」「交通安全意識が高まった」という評価をいただきました。この評価は、一般大衆向けの交通安全WEBコンテンツとしては画期的なことだと思っています。