解析技術の分野においても、積極的に最新技術の導入を行ってきた阪神高速。この数十年来、耐震分野において地震応答解析や被災度推定システムの開発を行ってきたが、大規模ネットワークにおいての解析精度をいかに向上させるかが課題だった。
解析の精度を向上させるには様々な検討が必要ですが、構造物の地震時の応答を求める計算の精度を高めることは、課題解決のための重要な検討になります。
これまでの地震応答解析では、振動単位と呼ぶ計算単位に区切って計算を行うのが普通です。範囲を区切って計算するという手法は、先人の技術者達が、コンピュータの計算能力の限界を考えながら、正確に解くために考え出されたテクニックとも言えます。
振動単位のイメージ
この計算手法はよく考えられた方法であるため安全性の評価という観点ではこの手法で十分だと考えられますが、構造物のよりリアルな動きを捉えるには限界があるとも言えます。過去の大地震でも発生していますが、高架橋のジョイント部に段差が生じるといった詳細な状況は、今の地震応答解析で求めるのは難しいと思われます。ましてや、阪神高速は都市高速ということもあり、平面方向も高さ方向も大きく変化する連続的な高架橋ですので、地震時の動きはより複雑になることが予想されます。このような連続高架橋の、地震時のよりリアルな動きを捉えるには、区切るのではなく連続的にモデル化して一気に解いてしまうというのが理想的だと言えます。
しかし、このような大規模の計算は、普通のパソコンでは扱えるわけではありません。
はい、そうです。
国内随一の計算速度を持つ「京」なら、このような大規模解析ができました。毎秒1京回(兆の一万倍)の計算を行う能力を持っているということだったのですが、やはりその能力は凄かったです。
「京」の共用が始まったのが平成24年9月からです。共用開始後から、産業界での利用も可能にする制度が設けられており(応募方式)、阪神高速では(株)地震工学研究開発センターと共同研究体制を組み、平成26年度にこの制度に応募しました。
先程の"連続高架橋の地震時応答解析"を検討テーマとして応募したところ、見事に採択され、「京」の使用が認められました。
我々の研究は、ただ単に地震時のリスク予測の精度を高めることだけが目的でなく、そのリスクをあぶり出してそれに備えることを目的としています。
広く社会に役立ちたいという京の理念と合致したのでしょうね。(笑)
あと、もう一つの決め手としては、京を使った大規模解析の経験があった(株)地震工学研究開発センターと共同研究体制を組んでいたということもあると思われます。京の採択では京を確実に使いこなせる技術力についても審査されますので、高度な計算技術を持たれている(株)地震工学研究開発センターさんがパートナーであったことは大きいと思われます。
そうだと言えます。