換気所建設の際には、周辺景観に配慮したデザイン設計の他にもクリアしなければならない課題が多く存在した。
はい。換気所の設計・設置は、道路本体の計画と連携して十分に検討したうえで進めなければなりません。そのため、土木部門との綿密なキャッチボールが必要になってきます。設置位置によって、換気所の見え方や存在感が変わるからです。例えば、換気所の周辺に建築物がある場合は、街並みの一部として見えるように工夫が必要です。
周辺の都市計画情報も積極的に収集し、将来、その地域がどのような環境になるのかも推し量りながらの計画・設計を進めなければなりませんでした。大和川沿いは国土交通省による高規格堤防等の整備が予定されていたため、将来的に新しい街並みが形成される可能性が高く、各換気所がそれらに調和するよう計画しなければなりません。
例えば遠里小野換気所は、高規格堤防の影響で地盤が高くなることを確認し高さ方向のプランニングを実施。換気所の完成後、大和川高規格堤防整備事業により地盤が上がり、想定していた通りのちょうど良い位置に入り口がきました(笑)。
盛り土前
盛り土後
換気所の規模や高さは、換気所に格納する多様な機器を効率よく配置できるように設計しなければなりません。機械部門からサイズや設置条件を出してもらい、それに沿うように、プランニングし建物のボリュームを考えます。
しかし、機械部門でも設計を進めながらの条件提示となるため、度々の設計変更を伴いながら進めていき、その都度、建物のプランも変えなければなりません。
大げさですが、4人家族で住むと聞いて住宅の設計を進めたいたのに、急に両親も同居になるので2世帯住宅にしてほしいと言われるようなものですね(笑)。
換気所内部には、集塵機、排風機、消音装置とそれらを稼働させるための電気設備や機械設備等、多様な設備を設置するための空間が必要となる
排風機を設置するための室の柱間隔、階高は、排風機の大きさで決定する。
建設予定地は、都市計画で決定された場所に、用途地域、日影規制、建ぺい率、容積率・接続道路等の法的条件を整理し、機器搬入時の車両や消防車の活動用地等も確認もしたうえで決定します。騒音規制法にも適合させなければなりません。換気所内部は、風が流れるように設計しますから通常の建物に比べ内部空間の壁が少なく、柱と柱の間隔が大きくなりがちです。ですから通常よりも外側の壁を分厚くしたり、柱1本1本を大きくしたりして、構造計画をしなければなりません。また、機器が稼働する時の音に対しての防音対策にも配慮しなければならないのです。
行政、電気部門、機械部門、土木部門から、
それぞれ厳しい条件が次々と提示されますが、
経済性も考えなければなりませんしね(笑)