ここまで鋼管集成橋脚の目的と開発経緯について聞いてきたが、もうひとつ、鋼管集成橋脚は耐震性能をはじめコスト面など多くの点において優れていることが、開発が積極的に進められた大きな理由である。ここで「鋼管集成橋脚の利点」をまとめておこう。
アンカーフレームの省略について補足しておくと、いずれはフーチングも省略し、鋼管を直接地面に埋め込む「杭基礎一体型の鋼管集成橋脚」にすることが、めざす完成形だと言う。それによって建設費と工期の大幅な短縮が見込めるからだ。
実はこの工法は以前から存在していたのだが、1964年の新潟地震の際に落橋した昭和大橋がこの工法を採用していたため、その後はあまり使われなくなった。しかし、小坂、篠原によると昭和大橋の落橋の原因は、柱が横一列に並んでいたからであり、鋼管集成橋脚のような組杭にすれば耐震性能は飛躍的に向上するのだと言う。現に修復された昭和大橋は二列の柱で支える構造になっている。さらに鋼管集成橋脚では横つなぎ材が地震エネルギーを吸収するため、基礎部分にかかる負担はより軽減される。
鋼管集成橋脚はこれからの橋脚として注目を集めていくことが予想される。
昭和大橋の落橋(昭和39年)