インバータ制御ジェットファンの導入は、経済性に優れたトンネル換気制御を実現しただけではなく、火災時の換気制御において大きな進展をもたらした。渋滞時に火災が発生した際、風速零化(低風速化)制御により、避難環境を一定時間確保し、避難者が煙に巻かれることなく非常口に到達できるようにしたのである。高速道路を利用されるお客様の安全を確保する上で極めて有用性が高いことから、特許を取得した。
特許「道路トンネル換気装置における火災時風速制御システム及びその制御方法」(特許第5462317号)(PDF)
トンネル内で万一火災が起きた場合に、煙が充満してしまうと視界は狭くなりますし、呼吸困難に陥る危険性が高まります。トンネルという閉鎖された空間では、車に乗っている人たちが煙に巻かれないで避難できるだけの時間を確保することが非常に重要です。渋滞がない場合には、火元の後方に居る人々を逃がすためにジェットファンを使って煙を前方に追いやれば良いのですが、問題は渋滞時です。火元の前方に居る人、後方に居る人どちらも逃がさなくてはなりません。
そこでジェットファンの風向や風量を細かく制御して火元付近の風速を速やかにゼロ(0m/s付近)に近づけ、煙の拡散を抑えようというのが「風速零化制御」です。
従来型のジェットファンでは回っているファンを止めて、逆方向に回転させようとしても、すぐには対応できませんでした。しかしインバータ制御ジェットファンでは回転を止めるのも、逆回転させるのもスムーズに行えます。
その結果、トンネル内の空気の流れをより速やかに抑制できるようになりました。
風速がゼロの環境下では、煙は自身の熱によりいったん上方に溜まりますので、煙の温度が下がり、再度降下してくるまでに時間を要することになります。
この間に非常口から避難していただくという仕組みです。
(4コマ目は発煙筒の煙が切れてしまったが風船の向きに注目。風速ゼロになり風船がゆっくり漂っている)
西行き線 STA.No250付近、初期車道内風速 6.0m/s、自然風 2.0m/s、発煙開始 風速零可制御開始時より30秒後