先進技術に裏打ちされた新機能を搭載する「HI-TEX」の誕生で、阪神高速道路の交通管制システムは新たなステージへと進んだ。だが先進的で安全・安心・快適な道路サービスをめざす技術の挑戦は、とどまることを知らない。次世代をめざして、交通管制システムの進化はこれからも続く。そこには、どんな夢が広がっているのだろう。最後に、交通管制システムの未来について話を聞いた。
「HI-TEX」の運用が開始され、今はどんな思いを持っていますか?
工事が終わり、お客さまへのサービス提供がもう始まっていますが、今も私は「HI-TEX」の仕事をしているんです。お客さまから得られる情報を集め、情報提供のサービスをより良いものにするために何が必要かを検討しているところです。「HI-TEX」によって、阪神高速の交通管制システムは新しく生まれ変わりました。でも交通管制システムの進化が、これで終わったわけではありません。お客さまに、よりタイムリーで信頼性の高い情報をお届けすることは、阪神高速にとって永遠の課題。「HI-TEX」がお客さまにどんなメリットをもたらすのか、これからさらに分析と検証を加え、次のステージをめざす取り組みに生かしたいと思っています。
交通管制システムは、これからどのように進化していくでしょう。
自動運転のクルマが、実用化に近づいています。そう遠くない将来、自動運転車を街中でふつうに見かける日がくるでしょう。そんな未来の社会では、交通管制システムの重要性がますます高まります。自動運転のクルマは道路を通じて情報を得るために(路車連携)、管制システムがあって初めて機能するからです。そんな未来につないでいくためにも、「HI-TEX」をさらに発展させ、進化させていかなくてはなりません。技術の力でこれから何ができるのか、将来をしっかりと見据え、私たちもしっかりその後を追いながら技術を高めていかなければなりません。
個人的には、将来クルマは自分で判断して、自律走行ができるところまで進化すると思います。でもそこにたどり着くまでには、やはり時間がかかります。そこで過渡期の自動運転として、向井さんがいわれたように、交通管制システムをはじめとするインフラ側が必要な情報を収集し、提供する機能を果たしていくのではないでしょうか。
これからの課題は?
「HI-TEX」では、電子化・自動化によって、今までのシステムとは比べものにならないくらいの省力化を実現しています。ですが、まだ管制員の方の業務の負担は少なくありません。管制員が自分で判断して、情報板に案内を表示するような場面がまだまだあります。そうした業務にAIを使って管制員の判断をサポートしたり、作業負担を軽減したりするようなシステムが、これからの交通管制には必要になると私は思っています。「HI-TEX」は、そうした次世代の交通管制システムのトビラを開くシステムです。
最後に読者にメッセージをお願いします。
私がこの会社に入っていちばん驚いたのは、高速道路を動かしているのは電気の技術だという事実です。電気設備がなければどんなシステムも動かないし、システムが働かなければ高速道路を運用することもできません。
高速道路というと、どうしても土木・建築のイメージがつきまといます。
私も実は入社前まで、そんな先入観にとらわれていて、入社してから認識が一変しました。高速道路ではさまざまなシステムが稼働し、弱電・強電にかかわらず電気通信系の技術者に、多くの活躍の場があることを、一人でも多くの方に知ってもらいたいと思います。特に高速道路は、鉄道などとは違い、たとえわずかな時間であっても止まることを許されない交通インフラ。24時間365日、動き続けなければならない使命を負いながらアップデートを重ねていくには当然技術力が必要ですし、その技術を生み出すのは電気通信系の技術者です。
土木職の技術者が仕事内容を聞かれると、返事に困ることはありません。「新しい道路をつくっています」とか、「維持管理のための点検をしています」といえば、すぐに分かってもらえます。でも阪神高速道路での土木技術者の仕事は、それだけではありません。私が「HI-TEX」のプロジェクトで担当したようなお客さまへの情報提供や情報発信も土木職の仕事だということを、ぜひ知ってほしいと思います。
構造物をつくるハードの仕事は目につきますが、ソフトの仕事は見えにくいですね。
私自身、大きな構造物をつくる仕事がしたいと思って阪神高速を選びました。今の仕事は、構造物には直接かかわりのない仕事ですが、実際にやってみるとスゴく楽しい。お客様の声がすぐに届く部署にいて、すごくやりがいを感じるし、他にも土木系の人がやりがいを感じられる仕事はたくさんあります。活躍のフィールドはひとつじゃないことを、ぜひ多くの人に知ってほしいと思います。