昔、コンピュータシステムがなかった時代には、データは紙ベース、図面はマイクロフィルムにして保管していたそうだ。必要な際にはプリントしなくてはならないし、保管場所にも気を遣った。
阪神高速では、前述のように昭和60(1985)年頃からデータベース化が進められてきたが、それを加速させるきっかけとなったのが、平成7(1995)年に発生した兵庫県南部地震だ。兵庫県南部地震では、橋梁の倒壊、落橋等の甚大な被害を経験し、地震発生直後より被災した構造物情報の収集、構造物の緊急点検、人命救助支援、沿道の安全確保等の活動により、情報管理の必要性を改めて学んだ。
さらに阪神高速では、更なるコスト縮減など維持管理に関わる取り組みの重要性が日々高まるなか、平成22(2010)年に独自で大改修を行い、より現場が使いやすいシステムを整えた。
一貫してめざしてきたのは、"必要な情報を必要な時に提供できること"という一点である。
それがなかなか難しいので私達も苦労しています(笑)。ただ、細分化しすぎると情報の精度を維持することが困難となり全体像が見えなくなるので、"大きくとらえられる"ということは結構意識しています。
また、一つの構造物について、履歴を追っていけるようするというのも重要です。構造物が完成した時の情報、初めて損傷が見つかった時の情報、そしてどのような補修が行われ、どのように経過観察されているのか。それらが一度に引き出せるようにすれば、広い視野に立って判断ができますし、長期的な点検や補修計画も立てやすくなります。
保全情報管理システムの構成
部署によっても見たい情報は違います。たとえば本社の企画部門でしたら、全体の予算を考えるためにマクロ的な情報がほしい。現場の管理部門では補修のための設計をするのに、桁ごとの細かい情報を見たい。点検業者は過去の点検結果と照らし合わせたいなどなど、使い方は本当に様々です。今のデータベースはあらゆる部署で頻繁に使われているので、それだけ使いやすいんだなと内心ほっとしていますが(笑)。
そうなんです。どのようなニーズに対して、どの情報を出すかは、常に悩みどころです。無駄なものを入れると、先に申したとおり精度維持が難しく、情報量が重くなりますので、削除するのも重要な仕事です。
とても勇気が要りますが(笑)
おかげさまで、阪神高速の保全情報管理システムに対する評価はとても高く、他の道路管理者から委託を受けて、それぞれの事情に合ったシステムをつくらせてもらっています。