いずれのPAも狭隘な敷地だが、中でも特に厳しい条件だった高石PAを一例に、いかに課題を解決していったのか、紹介する。
高石PAは、駐車場部分の区画線協議によりPA敷地となったのは北側の道路高欄(立ち上がり)に挟まれた細長い三角形の敷地でした。駐車台数は小型車24台、大型車10台となり、そこから必要なトイレの数や休憩室の面積が算出されます。
細かい話になりますが、三角形の敷地は幅の広いところで15ⅿ、狭いところで10m程度となっており、その両側を道路高欄で囲まれています。ここにまず車イス用の駐車2台分のスぺ―スの間口を設定すると、通路部分がすでに相当狭くなります。当然その上には屋根も掛けていきます。
トイレには多機能トイレを2つ、男女のトイレ、休憩室、喫煙室、自販機コーナー、道路情報の提供スペースなどを設けると、この三角形の敷地がすでに目一杯です。建物は風や地震によって倒壊しないよう相応の基礎を設ける必要があり、先に述べた高欄と基礎がギリギリの状態で計画することとなりました。高欄と基礎構造が近接しているので、施工も大変だったと思います。
こうしたことを踏まえ、細長い三角地をどのようにレイアウトするのか、パズルを組み合わせていくようなものです。ただ、必然的にやりようがあまりなくなってくるところもありまして。例えばトイレを手前に置いてしまうと、休憩するスペースがなくなる。ですからトイレを少しずつ奥に置き、手前に休憩スペースを広げていくなど、計画案を何案も検討し、何が最適解なのかを検討するのに時間を要しました。
機能とともにデザインも重要ですね。
その場所の地域性などを踏まえて、機能とデザインをリンクさせていく。私たちは、その両方を大事にしたいと思っています。
高石PAでは、身障者駐車場の屋根が掛かってる場、休憩する建物、さらにその奥に設備や防災備蓄用倉庫という三つの建物からなっており、それが本線を走っているときにどう見えるのかという点を踏まえながら、デザインを考えていきました。
地元の高石市には羽衣伝説がありまして、天女の羽衣をイメージモチーフとし、身障者駐車場の屋根を膜天井にしました。膜がその下から見えるようにして、休憩室の中の天井へとつながり、さらにトイレへの通路部分では波型の天井でリズムが生まれるよう統一感を出しています。羽衣がたなびいているようなイメージですね。
内部壁材には、高石の古い町並み、昔ながらの邸宅をイメージさせる漆喰壁を、トイレ内にはじゅらく壁を使用しています。これは調湿機能で水分をある程度一定に保つ役割もあります。木製ルーバーも使用し、全体的に自然素材に囲まれ、落ち着いたリラックスできる空間としています。
また、出入り口横には「TAKAISHI」とPA名をモチーフにしたオブジェを置き、ちょっとした遊び心も取り入れています。
PA名をモチーフにしたオブジェ
苦労された点はありますか。
例えば膜天井は、重量的には軽いのですが、風圧に対しては弱いのではないかと、そのせめぎ合いでした。膜天井のメーカーさんとともに、強度が取れるのかどうか研究する必要がありました。
また私たちは常にメンテナンスを念頭に置かなければなりません。企画・施工し、維持管理まで継続して長きにわたって関わっていくので、材料選定が非常に重要になってきます。例えば、漆喰はむずかしい材料なので施工しやすいか、メンテナンスに問題はないかなど、多角的な観点から選定しています。
材料選定には、荷重条件との調整も関わってくるのですね。
例えば高石PAは鉄骨造になっていまして、構造部分はできる限り強度を保たせつつ、構造重量を下げるように慎重に構造計算を行う必要があります。重量を下げつつ、構造強度を維持するのはある意味、矛盾する部分がありますが、構造設計者との密なコミュニケーションが欠かせません。当然コスト面も考えながらですし。限られた土地の中で、強度がありながら、軽量化していく、そのギリギリの構造計算を行っていきます。その中で膜天井は一つのアイデアとなりました。
また、構造に直接関係しない単純に床を上げている部分については、EPSという発泡スチロールブロックを床面に並べることで重量を軽く仕上げるようにしています。その他、仕上材は重量をなるべく軽くするように、屋根などは金属板で軽量なものを選定しています。風に対しても強いものを選定する必要があります。皆さんから見えないところでの軽量化を強く意識した上で行っています。少しでも重量が増えたら、ドキドキしてしまいますね(笑)。
海に近く、羽衣伝説が残る地域色にちなみ、エントランス、休憩室内は白い膜天井でつながりを持たせ、高さのある開放感あふれる空間に。木製ルーバー、漆喰壁などの自然素材に囲まれ、リラックスできる。