すべての構造物が背負っている宿命、それは完成した瞬間から劣化に向かって歩み始めるということだ。高速道路も例外ではない。それだけに、お客さまの安全・安心・快適な高速道路の走行と道路構造物の寿命をできるだけ延ばすことを使命としている維持管理部門に求められる期待は大きい。
その維持管理部門にとって、宝物とも言えるのが「情報」だ。正確な情報なしには、最適な点検や補修は望めない。そこで阪神高速では、昭和60(1985)年頃から実践的な情報管理システムの構築が進められてきた。「先人達の努力のおかげで、膨大な維持管理情報が蓄積され、信頼性が高く使い勝手のいいシステムになってきたと思う」と語るのは保全交通部保全企画課の川上順子。2010年の保全情報管理システムの大改修にも立ち会った彼女に話を聞いた。
維持管理に必要な情報の種類は大きく分けて、「資産データ」、「点検データ」、「補修データ」の3つです。
一番目の「資産データ」とは道路、橋梁、トンネル、標識など、阪神高速の土木構造物すべてを指し、設置年や種別などの情報です。阪神高速の営業距離は伸びていっていますから、「資産データ」は当然蓄積されていくわけですね。
「点検データ」についても、点検はほぼ毎日どこかで行われており、年間数万件に及びます。
「補修データ」も設備の増加に比例して増えていきます。
保全管理システムの概念
これらの情報を、関係部署がそれぞれに管理していたらどうなるでしょう。非常に効率が悪いですよね?「○○橋」のことを調べるために設計、点検結果、補修履歴などの情報を求めて、各部署を走り回らなくてはなりません。そのようなことがないように、保全管理情報システムですべての情報を一元管理しているのです。言わば、阪神高速の構造物全てについてのカルテが集積されていると言えます。
川上 順子
おっしゃる通りです。
更新されていない情報は、役に立たないだけでなく悪くすれば妨げになる場合だってあります。
常に新しい情報が入力されている状態を保つことが、このシステムの生命線と言ってもいいくらいです。そのためには間違いなく簡単に入力できることがとても重要。
現在のシステムでは、点検や補修を済ませた各担当者が予め用意された候補から、それぞれ直接入力できるようにしているので、リアルタイムで正確な情報が更新されています。