都市部の慢性的な交通混雑を緩和するための新たな道路ネットワーク、「大阪都市再生環状道路」。その一翼を担うのが、平成25年5月に開通した2号淀川左岸線の大阪市此花区島屋から海老江ジャンクションを結ぶ4.3kmである。この開通によって、3号神戸線と5号湾岸線が直接つながり、阪神高速道路の利用がより一層便利になった。
この区間の大きな特徴は、4.3kmのうち3.6kmがトンネルであること。正蓮寺川の水を暗渠に流し、川を埋め立てトンネルを通すという大工事が行われ、阪神高速で3番目に長い正蓮寺川トンネルの誕生となった。
市街地の下を走るトンネルだけに、出口周辺の環境への配慮が不可欠。ジェットファンと換気所排風機を有するトンネルの換気方式において、国内初の試みとして、ジェットファン34台をインバータで制御する技術を採用した。環境への配慮と同時に、万一渋滞時に火災が発生した場合の対策をも視野に入れた画期的なものだ。プロジェクトを推進した大阪建設部淀川左岸線建設事務所(当時)の原秀史、久米正一、神戸建設部神戸山手線建設事務所(当時)の弦巻淳に話を聞いた。
基本的なことからお話ししますと、トンネル内の空気というのは車の流れる方向に向かって動いています。
西行は海老江ジャンクション側から島屋側に、東行は逆に島屋側から海老江ジャンクション側に向かって流れているわけです。
そのままにしておくとトンネルの出口から排気ガスや粉塵の混じった空気が排出されてしまう。
都市部ですから当然周辺への配慮が必要となります。
そこで、トンネルの出口付近に換気所を設置し排風機により、トンネル内の空気が外に出る前に吸い込んできれいな空気にしてから屋外に排出するということをしています。
この時に排風機と組み合わせて使用されるのがジェットファン。車の走行によって生じる空気の流れとは逆方向に風を送り、トンネル外へ出ようとする空気の流れを抑制し、そのことによって排風機がトンネル内の空気を吸い込みやすくします。
この方法を<縦流+集中排気トンネル換気方式>と呼んでいます。
その通りです。排風機とジェットファンを組み合わせた換気方式自体はこれまでも多く採用されていますが、従来型のジェットファンは回転数が一定で、運転台数によって風量を調節する、台数制御しかできませんでした。
そのためどうしても制御が段階的になり、結果的に過剰な運転となるときがありました。(定風速式<従来型>)またジェットファンが過剰運転となる場合は、排風機も過剰運転することとなり換気設備全体の消費電力量が大きくなるという問題がありました。
それを解決するために、今回インバータ制御によるジェットファンを導入したのです。