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重さ80トンの"巨大ロボット"が、赤い橋の上を走り出す

巨体同士が分離・合体
橋梁点検・補修プラットフォーム「Dr.RING」デビュー。

年間8200万トンの貨物取扱量を誇る大阪港にあって、
最も船舶航行量の多い航路に架かる港大橋は、
「浪速の名橋50選」にも選ばれた全長980mのゲルバートラス橋。
その真っ赤な港大橋を包み込むように、
巨大なリング状の構造物が2016年から稼働を始めた。
その名も「Dr.RING」――。
阪神高速が技術の粋を集めてつくり上げた点検・補修作業専用のプラットフォームだ。

完成までに要した期間は、実に3年。
そこで中心的な役割を果たしたのは、機械技術者たちだった。
Dr.RINGの本格運用が始まったことで港大橋のメンテナンス作業は大幅に効率化され、
長大橋としての安全性は飛躍的に向上した。
プロジェクトにかかわった技術者にとって、その3年間は、
自らの責任の重さと社会的役割の大きさを再認識する3年間でもあった。

Dr.RING

Dr.RING

では技術者たちはプロジェクトにどうかかわり、どのような思いで数々の難問、難題に挑み、それを乗り越えていったのか。

次ページ以降で、プロジェクトにかかわった5人の技術者、 中野順一(当時、大阪管理部施設保全課/機械職)、黒嵜寿行(当時、大阪管理局保全部施設保全課/機械職)、 加藤宗彦(当時、大阪管理局保全部施設工事課/機械職)、下方正康(当時、大阪管理局保全部施設工事課/機械職)、 林訓裕(当時、大阪管理部保全技術課/土木職) の話をご紹介する。

【ゲルバートラス橋】

鉄(鋼)の部材を三角形に組み合わせてつくる「トラス橋」から派生した橋梁形式で、ドイツ人のハインリッヒ・ゲルバーが考案したことから、その名がある。ゲルバートラス橋は、左右の定着桁を張り出して中央の吊桁を支える構造で、橋脚と橋脚の間の支間長を伸ばすことが可能となるほか、軟弱地盤における不等沈下に対しても有利であるなど、さまざまな特徴がある。なお港大橋は全長が980m、中央支間が510mあり、ゲルバートラス橋としては世界最大級の規模を誇る。

【Dr.RING導入の背景】

Dr.RINGは、港大橋の点検作業用プラットフォームとしては2代目。初代は1986年に供用が開始されたが、30年もの長きにわたって潮風にさらされたため機械類の腐食が激しく、老朽化が進んでいた。これを放置すると、脱落した部品が道路上に落下する可能性があり極めて危険であることや、点検台車に電気を送るトロリー線が絶縁劣化して漏電を起こして事故の原因ともなりかねないこと、さらに安全管理の観点から「長大橋維持管理委員会」において新たな点検台車の必要性が認められたことなどを背景に、全面的にリニューアルすることが決まった。

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