開通から50年余り。阪神高速道路では、多くの区間で経年劣化による構造物の老朽化が進んでいる。その対策として阪神高速は、構造物を長期にわたって健全な状態を維持し続けるために、大規模な更新・修繕を実施する「高速道路リニューアルプロジェクト」に取り組んでいる。注目は、15号堺線玉出入口のランプ橋(※1)。傷みが激しい鉄筋コンクリート床版(RC床版)の取替工事で、新開発のUFC床版(※2)が日本で初めて用いられた。
UFC床版は、2011年から阪神高速が鹿島建設株式会社と共同で研究に取り組む最新技術。基礎的な研究がほぼ完了した次世代技術を、いかに実際の供用中の高速道路の事情に即したものに適合させ、今後のリニューアルプロジェクトに有効であることを実証するか。詳細設計と施工管理にかかわる技術者たちの格闘の物語があった。
UFC床版への取替工事が行なわれた玉出入口ランプ橋は、長さ22mの単純鈑桁橋6連で構成される道路橋。昭和44年(1969年)の供用開始から50年が経過し、経年劣化や通行車両の大型化にともなう活荷重の増加など複合的な要因によって鉄筋コンクリート床版(RC床版)の損傷が進み、床版取替が待ったなしの課題だった。
UFC床版は、工事の対象となった6連のうち3連において採用された。他の3連では既存のプレキャスト床版が採用され、UFC床版の現場適用性について既存技術との比較検証がなされた。
50年、100年という長期にわたって橋梁の健全性を維持するための先端技術が用いられたのである。
しかし建設から50年が過ぎ、道路橋の設計基準も新しくなり、従来の技術で現行基準をクリアするには床版の厚さを取替前より厚くする必要があり、橋桁の補強などの付帯工事も必要となります。そこで解決策として、基礎的な研究開発が完了していたUFC床版を使えないかという話になったのです。
阪神高速道路の道路橋には、RC床版だけでなく、鉄製の鋼床版も多く使われています。もともとUFC床版は、この鋼床版に代わる新設床版として研究開発が始まり、コンクリート系の床版でありながら鋼床版と同等の軽さを実現できることが最大の特徴です。UFC床版を劣化したRC床版の取替にも活用すれば、床版を取替前より薄くすることができ、橋桁補強工事を簡略化できるとともに、UFCの緻密さにより、橋梁の耐久性も飛躍的に向上させることができます。
当社が現在進めている高速道路リニューアルプロジェクトでは、ランプ橋だけでなく、高速道路本線の道路橋においても床版取替工事が計画されています。玉出入口ランプ橋の工事は、UFC床版を本線の床版取替に適用することも視野に入れた取り組みでもあったのです。